[CSR]ナイフが不器用な小学生、メーカーが直接教育

力の調整に苦心しながら、ナイフを使った鉛筆削りに挑戦する子どもたちのようす
力の調整に苦心しながら、ナイフを使った鉛筆削りに挑戦する子どもたちのようす

スイスアーミーナイフなどで知られるビクトリノックス・ジャパンは、ナイフメーカーの責任として、刃物の正しい使い方の啓発を2010年から行っている。先の丸い安全ナイフの工作セットや出張ワークショップなどで手指を使う機会を提供する。10月1日の記者会見と同時に行われたワークショップには、抽選で選ばれた小学生4人と保護者が参加し、鉛筆を削る体験をした。(オルタナ編集部=佐藤理来)

記者会見に参加した谷田貝公昭教授(目白大学)は、子どもの手指の巧緻性や生活習慣に関する研究者だ。業界内で先駆けた1978年に、「指・手腕の巧緻性の研究」を発表。実技調査に基づいた研究を進め、1989年に全国規模の調査を行い、ナイフで鉛筆を削れない子どもたちの実態を明らかにした。

谷田貝教授によれば、「ナイフで鉛筆を削るのは1960年代であれば6歳ごろには習得していた技術」という。この背景には、日本における安全教育に関する考え方が変化したことがあると指摘した。

また、ビクトリノックス・ジャパンは2014年9月、「道具、ナイフ教育」意識に関する日瑞の実態インターネット調査を行った。対象は、日本またはスイスに住み、6歳~15歳の子どもを持つ親、それぞれ105人だ。(有効回答数:日本105人、スイス103人)

その結果、子どものナイフ利用目的について、スイスでは「アウトドア(69.9%)」「携帯食の切り分け(38.8%)」などで日常的に使われているのに対し、日本で最も多かった回答は「一切使っていない(58.1%)」だった。

スイスでは、就学年齢に入るころには子どもにナイフを与え、使い方を学ばせるが、日本ではナイフを使用する機会そのものに乏しい。親自身も子どもの頃にナイフ教育を受けておらず、教え方が分からないというケースも多い。

ビクトリノックス・ジャパンの田中麻美子社長は「ナイフはあらゆる道具の原点でもあり、手指の巧緻性を養うのにぴったりのツール。日本の子どもはナイフが苦手だと言われるが、工作ワークショップなどを開くと、子どもたちは目を輝かせて取り組んでいる。機会さえ与えれば上手になる」と説明する。

同社は「ナイフを人に向けない」や「使わないときは刃を閉じる」などナイフを扱う上での「8つの約束」も提案している。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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