エコ賃貸を始めてみたが、エコビジネスは難しい。(1)[小林 光]

羽根木テラスBIOの全景
羽根木テラスBIOの全景

環境との関係から見ると世の中のビジネスには、ざっくり分けてたった2つの種類しかない。

一つは、環境を壊してお金に変えるもの。もう一つは、環境をよくしてお金を得るものである。ビジネスとしては、残念ながら前者がほとんどで、その行き着く先は、山河が枯れ果てて、代わりにお札の山がそびえたつ世界である。後者のビジネスが盛んにならないと、人類には未来がないことは言うまでもない。

けれども、多くのビジネスマンは、環境なんて儲からない、そこにお金を投じるのは後ろ向き投資であって、生産価格が上がって均衡点は下がるので必ず損だ、とおっしゃる。他方で、環境に熱心な活動家はおしなべて、環境を商売のタネにするのは怪しからん、環境は儲からなくとも守らないといけないのだ、とおっしゃる。

どちらも一面の真実ではある。しかし、少なくとも、環境をよくしながら儲けられるようにすることは決して悪いことではないことには同意が得られよう。私は、他人様へ、環境をよくしていける経済社会へ移行すべきことを説く立場なので、自ら実践を、という考えから、最近二つの環境経営を手掛け始めた。このコラムでは、今後、環境経営者として私が感じたことを時々発信していこうと思う。

二つとは、この四月に上市したエコ賃貸の経営とこの6月末の株主総会で選任された取締役とである。

前者の賃貸は、平成23年の環境省退官直後から開業した青色申告の個人事業主「エコ・スーパービジョン」によって経営されている。後者は、日本では最も古い老舗の洋紙問屋を母体とする商社、日本紙パルプ商事での社外取締役(独立役員)の仕事である。ここでは、社会の風、もっと言えば地球の風を同社に吹き込み、地球の法に一層かなった経営が行われるようにすることが役割となっている。

同社は、元々の紙ビジネスを原点に、今では、下流では、紙や容器包装などのリサイクル、上流では、バイオマス発電などに仕事を広げ、環境ビジネス企業になりつつある。

どちらの経営体験も、大いにわくわくさせてくれる(ちなみに、現職の慶応大学の教授も、今年度末で定年退職になる。いよいよサラリーマン卒業だ。大学院に絞った研究・教育は続けるが、来年からは、軸足を、環境経営の実践に置くこととしていて、もっとわくわくが増えると楽しみにしている。)。

前置きはこの位にして、今回はエコ賃貸経営について報告しよう。
 
羽根木テラスBIOのスペック

私が始めたエコ賃貸は、羽根木テラスBIOと言い、井の頭線東松原駅から徒歩3分の駅近に立地している。2階建てのメゾネット(セミディタッチド・ハウス)で2軒。それぞれの面積は76平米、2LDKである。前面には85平米の広い庭がある。軽量鉄骨づくりで、耐震等級は3と、公的な避難所と比べ同等以上の強度である。

hikaru

小林 光(東大先端科学技術研究センター研究顧問)

1949年、東京生まれ。73年、慶應義塾大学経済学部を卒業し、環境庁入庁。環境管理局長、地球環境局長、事務次官を歴任し、2011年退官。以降、慶應SFCや東大駒場、米国ノースセントラル・カレッジなどで教鞭を執る。社会人として、東大都市工学科修了、工学博士。上場企業の社外取締役やエコ賃貸施主として経営にも携わる

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