■「青森のリンゴを世界遺産に」

日立の社内販売会では、五農のみそを使用したドーナツ「みそど」(160円)、スチューベン(ぶどう)を使った「スチューベンドリンク酢」(180円)、地域の米粉を使った「こめコメこめ粉メン」(150円)、「真っ赤なリンゴジュース」(500円)、「つがるロマン真空パック(コメ)」(100円)、採れたてのリンゴ(ふじ)(100円)を販売した。
これらは、地元企業と共同開発した商品で、普段は地元の「軽トラ市」や「五農市」などで販売しているという。
五農高・生物生産科2年の宮川瑠花さんは、「一人でリンゴを10個も買っていく人もいた。フランスなど世界のリンゴに押されているが、やっぱり青森のリンゴは特別だと思った」と嬉しそうだ。
宮川さんは、「青森のリンゴで『世界農業遺産』登録も目指している。認定されれば、農家、加工会社、流通と産業全体が活性化する。高齢化が進む五所川原を元気にしていきたい」と続ける。
さらに、同校は現在、五所川原市で18年ぶりの新品種となった「栄紅」(えいこう)を育成中だ。果肉まで赤いのが特徴で、2017年の初出荷を予定している。

日立製作所情報・通信システム社経営戦略室ブランド・コミュニケーション本部CSR推進部の関口慎一郎部長は、「全社員向けのメルマガで社内販売会を周知してきた。青森から高校生が来ると聞き、部門を超えて協力者が現れた。地域や農業の課題を解決する『社会イノベーション事業』への理解を深めるとともに、高校生のプレゼン能力を高める良い機会になった」と話す。
過疎化、高齢化、後継者問題――。農業が抱える課題はまだまだ多い。
だが、五農高の加藤佑也教諭は、「5年ほど前から6次産業化に力を入れているが、販売実習の機会を得たり、企業と商品を開発したり、外部の協力もあって、手応えを感じている。リピーターも少しずつ増えてきた。地域や農業の未来を真剣に考えている生徒の思いが実れば」と力を込めた。