これに反発したのが、多国籍バイオ化学メーカーのモンサントだ。同社は自社製の除草剤ラウンドアップに耐性をもつ遺伝子組み換え作物をセットで開発・販売しており、いまや世界の遺伝子組み換え作物の種の90%を供給しているとされる。
このモンサントが全米食料品協会(GMA)と組んで、バーモント州に対して食品表示法の差し止め訴訟に踏み切った。スターバックスもGMAに加盟しているため、ニール・ヤングが「スターバックスがモンサントと組んでGMOの表示を妨害している」と受け止めたのだ。
米スターバックス社はホームページ上で「当社はバーモント州法差し止めには加わっていないし、モンサントと同盟を組んでいるわけでもない」とニール・ヤングの主張に真っ向から反論した。
しかし米国のフェイスブックやツイッターなどSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)では、「だとしても、スターバックスのラテに使う牛乳には、GMO穀物が使われているだろう」「スターバックの全製品をGMOフリーにしないのか」などの意見も相次ぎ、旗色は悪い。
このニュースは日本のメディアで報じられることは少ないし、当面は日本で大きな話題になる可能性は少ないだろう。そもそも、日本人の間でGMOの危険性に対する認知度はまだ低いからだ。「無関心」に近いと言ってよいだろう。
だが、今回のエピソードには日本企業も留意しておいた方が良いポイントが三つある。
一つ目は、いま米国の市民・消費者の間でGMOに対する危機感が急速に広がっていることだ。米国ではここ数年、「食の安全性」への関心が高まっている。日本人も「食の安心・安全」にはうるさいというが、実際のところは「食品偽装」や賞味期限などの表示問題、あるいは最近メディアを賑わせている「異物混入」の問題など、「目に見えるリスク」にとどまっているのが現状だ。