大丸東京の「売らない店」、接客のプロがモノの背景を伝える

記事のポイント


  1. 大丸東京店9階の「明日見世(あすみせ)」はショールーミングスペースだ
  2. ショールーミングサービスは増えてきたが、強味は販売員による接客だ
  3. 3カ月ごとに変わるソーシャルグッドな商品の背景を丁寧に伝える

大丸松坂屋百貨店は昨年9月、大丸東京店に構えたショールーミーングスペース「明日見世(あすみせ)」を拡充した。従来は4階にあったスペースだが、9階に移し、面積を4倍に増やした。商品を実際に触れることができるショールーミーングスペースでは、担当販売員がモノの背景を伝える。(オルタナ副編集長=池田 真隆)

D2Cブランドのショールーミングスペース「明日見世(あすみせ)」

明日見世では、商品の「体験価値」を最大限に高めるため、陳列にはこだわった。スペースは約130坪あるが、配置したブランドの数はわずか20〜25ブランドだ。

商品の魅力を伝えるポップも最小限にして、物販コーナーとは差別化した。来店客が移動しやすいように導線も十分に確保している。

主に小規模ブランドを中心にキュレーションした

商品を置いた荷台にはAIカメラを設置しており、個人情報が分からない形で、性別や年齢、滞在時間などのデータを収集する。出品ブランドはそのデータをもらうことができるので、マーケティングに生かすことができる。

商品棚にはAIカメラ(写真奥)を設置した

コロナ禍を機に「売る」以外のサービスを考えた

ショールーミーングサービスはコロナ禍で増えてきた。店では商品を触り、ECサイトなどで購入する新しいモノの売り方だ。

その場で購入しないので、モノを持たずに次の場所に向かうことができる。効率的に動きたい「タイパ」を求める時代に合った消費の形でもある。

店内にはカフェスペースもある

大丸東京も2021年から明日見世をオープンした。コロナ禍で打撃を受けたことを機に「売る」以外のサービスを考えた。

3カ月ごとに出品ブランドを入れ替え

明日見世マネージャーである、大丸松坂屋百貨店の大貫哲也・経営戦略本部DX推進部デジタル事業開発担当は、既存のショールーミーング店との違いについて、「プロの接客員がいること」と話した。

明日見世では、接客員のことを「アンバサダー」と名付けた。3カ月ごとに陳列する商品が入れ替わるが、アンバサダーは全商品の背景を含めて、頭に入れる。売り場スペースもあるので、実際に商品を触れて、接客を聞いた後でその場で購入もできる。

大貫マネージャーによると、明日見世では物販の売上高に関する目標を定めていない。30代の女性を呼び込み、大丸東京店の他のフロアへの送客を狙う。明日見世への出品費は12週間契約で90万円。

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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キーワード: #エシカル消費

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