■「1型糖尿病」患者の1本の電話がきっかけ
グランプリに選ばれた「1型糖尿病の患者のためのジューC事業」は、カバヤ食品に「1型糖尿病」の子どもを持つ母親から電話がきたことがきっかけだったという。
1型糖尿病の患者は、糖尿病患者の99%を占める2型(成人型)糖尿病とは違い、原因不明で突発的に発症する。毎日自分でインスリンを注射するが、効きすぎると低血糖になる。そこで、カバヤ食品低血糖時対策として「ジューCグルコース」を開発した。重要なステークホルダーである子どもの苦しみを無視することができなかったのだ。
だが、売り上げが立たず、事業の継続が難しくなってきたところ、1型糖尿病患者を支援する日本IDDMネットワークと出会った。同NPOは、患者向けの販路開拓に尽力した。
自身も患者である日本IDDMネットワークの大室詠一専務理事は、「これまで活動や病気が認知されることがなかった。晴れの舞台で賞をもらえて本当にうれしい。2015年までに、『治らない』病気から『治る』病気にするために治療法を見つけていきたい」と、涙ぐんだ。
カバヤ食品研究室の岡本智志室長は、「事業を始めようと思って始めたわけではなく、『乗りかかった船』だった。沈みそうになりながら、IDDMが助けてくれたおかげで少しずつ軌道に乗ってきた。これからも手を取り合って頑張っていきたい」と決意を語った。
このほか、優秀賞には、認定特定非営利活動法人シャプラニール=市民による海外協力の会(東京・新宿)と太陽油脂(横浜市)による「天然石けんづくりで女性の収入向上支援事業」、福島県の児童養護施設の子どもの健康を考える会(福島市)と福味商事(福島県本宮市)、宗教法人日本ルーテル教団による「健康手帳電子化システム開発事業」が選ばれた。
サンクゼール賞は、認定特定非営利活動法人育て上げネット(東京都立川市)と新生銀行(東京・中央)による「金銭基礎教育マネーコネクション事業」。オルタナ賞には、特定非営利活動法人遠野山・里・暮らしネットワーク(岩手県遠野市)と福市(大阪市)による「小さな手仕事で被災地と世界を結ぶ協働事業」が選ばれた。
日本パートナーシップ大賞は、特定非営利活動法人パートナーシップサポートセンター(名古屋市)が2002年から開催しており、今年から認定特定非営利活動法人日本 NPOセンター(東京・千代田)が加わった。