ロック・ミュージシャンによるCSR [笹谷 秀光]

■Band Aid 30によるエボラ出血熱支援
今回は、過去に例を見ない規模に拡大するエボラ出血熱に苦しむアフリカの人々を救済するプロジェクトとして、ボブ・ゲルドフが、1984年のBand Aid、2004年のBand Aid 20に続き、新たに、Band Aid 30というプロジェクトとして展開しました。

Band Aid 30の参加者は、ボブ・ゲルドフとともにこの曲を書いたミッジ・ユーロや1984年のオリジナルから参加していたU2のボノなどです。

Band Aid 30による“Do They Know It’s Christmas? (2014)”のほか、過去のオリジナル曲(1984年)、Band Aid II(1989年)、Band Aid 20(2004年)を含む4曲を収録したシングル盤で、ダウンロード購入もできます。英BBC放送などによると、発売後2014年11月に最新シングルチャートで1位となったと伝えられています。

■欧州ミュージシャンのCSRメッセージ

LIVE AID(1985年)、LIVE 8(2005年)、Band Aid 30(2014年)とこの間の活動を見ると、情報技術・SNS技術の進展もあってますますメッセージの伝達が高速化しており、配信手段もLIVE 8では映像のインターネット配信、Band Aid 30では音楽のダウンロードの本格化など配信手段の進化も見られることは、音楽などの文化を通じた活動のヒントになります。

提唱者が幅広い連帯を実現していることや、世界各国での一斉実施、メディアの巻き込みなどの特色があります。また、貧困問題や人権問題に関心の高い欧州らしい発想の取り組みです。LIVE 8のDVDのタイトルも“One day, one concert, one world”とメッセージ性が強いものでした。

このような試みは、ロック発祥の英国を中心とした、ロックグループ間の連携の強い欧州ならではのものであり、コンサートでメッセージ性の強い歌を通じて世界に訴えかけ、活動に継続性も見られます。売上金をアフリカ等へ支援する仕組みの中で、楽曲の良さもあって広がりを見せ、共感する消費者が音楽の購入により支援に参加できることも重要です。

今、組織は自分の持てるスキルや本業を活かして社会的課題に対応することが求められています。社会的責任については、2010年11月に、すべての組織に適用される国際規格「社会的責任の手引」ISO26000が発行されました。この規格では、組織は本業を通じて社会的責任(SR:Social Responsibility)を遂行すべきであるという定義と社会的責任の手引となる体系が示されました。

これに照らしてみると、LIVE AIDやLIVE 8は、ロックグループや音楽関係者が主導して、消費者も含めて幅広い参加を仰ぐ「社会的責任のプラットフォーム」を形成していると理解できます。LIVE AIDやLIVE 8は幅広い音楽関係者が参加する本業関連CSRの仕組みに育っているのです。

■「12-12-12/ニューヨーク、奇跡のライブ」

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笹谷 秀光(CSR/SDGsコンサルタント)

東京大学法学部卒。1977年農林省入省。2005年環境省大臣官房審議官、2006年農林水産省大臣官房審議官、2007年関東森林管理局長を経て、2008年退官。同年~2019年4月伊藤園で、取締役、常務執行役員等を歴任。2020年4月より現職。著書『CSR新時代の競争戦略』日本評論社・2013年)、『協創力が稼ぐ時代』(ウィズワークス社・2015年)。『 経営に生かすSDGs講座』(環境新聞社・2018年)、『Q&A SDGs経営』(日本経済新聞出版社・2019年)。 笹谷秀光公式サイトー発信型三方よし 執筆記事一覧 

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