女性が輝く社会をどう創るか?

■女性特有の社会課題にフォーカス

原田 女性特有の社会課題というのは具体的にどんなものを指すのですか。

薗田 たくさんありますよ。自殺者まで出てしまう産後うつ、シングルマザーの貧困、急増しているドメスティック・バイオレンス(DV)、マタニティーハラスメント、同性愛者などLGBT差別などが代表的なものです。こうした課題解決に向け、女性ならではの視点を生かしたビジネスモデルを構築し、社会にイノベーションを起こしていかなくてはなりません。

原田 一部は既に社会ニーズが顕在化し、社会課題の解決のための事業が始まっているものもあるようですが。

薗田 そうですね。家事と育児の両立が困難な人向けの家事・育児代行サービス、介護サービスなどはビジネスモデルができています。今後はスケールアウトが必要です。ここへきて、動きがあるのは、女性の活動・起業を支援するコミュニティ融資やマイクロファイナンス、ソーシャルファンドなどができつつあります。これらは規模拡大には欠かせません。

原田 具体的な製品・サービスについて詳しく説明してもらえますか。

周りの人の目を気にすることなく授乳できるモーハウスの授乳服
周りの人の目を気にすることなく授乳できるモーハウスの授乳服

薗田 私が注目しているものでは、例えば、有限会社モーハウスの授乳服。洋服の胸部分にスリットが入っており、周りの人の目を気にすることなく授乳できる便利な服です。自由に授乳できないと赤ちゃんが泣くので、外出もままなりません。それで育児ひきこもりになってしまうママもいるくらい。授乳服はママの行動範囲を広げます。

他には、バングラデシュでカバンを制作している社会起業家、山口絵理子さんが代表をつとめるマザーハウスと、がん患者が自立、活躍できる社会を目指すキャンサー・ソリューションズが共同で開発したのが乳がん経験者のための「クッション入りショルダーストラップ」。自分の身体に合うバッグがないというのが乳がん経験者の悩みでしたが、おしゃれと身体へのやさしさを追求したこの商品はユニバーサルデザインとして大変な人気です。

原田 相当多くの製品が市場に登場してきているのが実感できます。では、視点を変えてサービスということではどんなものがありますか。

薗田 すっかり有名になった病児保育のNPO法人フローレンスは典型ですが、他にも、三菱地所やタニタ、医療機関などが共同で提供している「まるのうち保健室」なんかユニークですね。

東京・丸の内で働く女性のための街の保健室なのですが、ワンコイン(500円)で体組成計、ヘモグロビン測定機、骨密度計で測定をしたあと、カウンセラーから、食生活や女性の健康など幅広くアドバイスを受けることができます。働きながら妊娠できる身体づくりなんていうお話も聞けるのです。

■女性の社会起業家支援で製品販売も

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原田 勝広(オルタナ論説委員)

日本経済新聞記者・編集委員として活躍。大企業の不正をスクープし、企業の社会的責任の重要性を訴えたことで日本新聞協会賞を受賞。サンパウロ特派員、ニューヨーク駐在を経て明治学院大学教授に就任。専門は国連、 ESG・SDGs論。NPO・NGO論。現在、湘南医療大学で教鞭をとる。著書は『国連機関でグローバルに生きる』など多数。執筆記事一覧

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