「70億人から90億人」時代を生き抜くサステナビリティ戦略――「サステナブル・ブランズ会議2015」レポート

■グローバル企業の回答

サステナビリティを90億人時代への指標とするグローバル企業たちは、何を考え、どのような動きをとっているのだろうか。

BASFは、化学を通して90億人時代をリードしようとしている。メガシティ時代の建物を支えるクリーンなコンクリート、大都市のモビリティ問題に対応する触媒コンバーター、人口増で悪化するはずの貧困・飢餓問題を改善するための栄養補助製品など、幅広い分野に90億人を持続可能なかたちで支援するためのソリューションを投入、強化を図っている。

HPのシニア・フェロー・チーフ・エンジニア、チャンドラカント・パテル氏。
HPのシニア・フェロー・チーフ・エンジニア、チャンドラカント・パテル氏。

今年の会議に「チーフ・フーチャリスト」を登壇させたフォードは、プレゼンのほとんどの時間を、自社の話ではなく、地球レベルでの人口、食糧・栄養、高齢化・少子化、女性問題等のリスクの議論に費やした。

現在我々が直面している変化は、人類未踏の領域であり、積み上げた経験から今後の予測を立てることもままならない。そのような新しいフェーズの中で、企業はどのように次の手を読み、経済の持続に貢献しながらビジネスを持続させていくのか、という大きな問題提起であった。

自動車メーカーとしてのフォードは、メガシティへの人口流入によるモビリティの硬直化を、根本的に解決することにフォーカスしている。チェアマンであるビル・フォード氏によれば、フォードが提供しようとしているモビリティとは、「自由とイノベーションを進化させるための鍵である」。

そしてそれは、交通渋滞の緩和、大気汚染や事故の問題にとどまらない。仕事を求めて農村部から都市部に人口が流れ込むことによるコミュニティの分断や家族の離散、社会的不公平など、社会構造全体の流動性の問題を含んだ大きなテーマなのである。そういった大きな問題に取り組むため、フォードは新しいタイプのパートナーシップと技術の提供を推進している。

HPからは、シニア・フェロー・チーフ・エンジニアである、チャンドラカント・パテル氏が参加。エンジニアの視点から、90億人時代の資源・エネルギーマネジメントは、今のシステムをそのまま使っていては立ち行かない、と主張した。パテル氏が考える新しい仕組みは、熱力学第二法則にのっとっている。

手書きのデザインで、熱力学第二法則にのっとった新しいエネルギー管理の青写真をわかりやすく説明
手書きのデザインで、熱力学第二法則にのっとった新しいエネルギー管理の青写真をわかりやすく説明

消費エネルギー(ジュール換算)を通貨として、資源の採掘から製造、使用、廃棄に至るまで、ライフサイクルのステージ毎の通貨を合算していくことにより、最終的にエネルギーの不可逆的なロスが少ない経路を見出していくというアプローチである。

このアプローチでは、サイバー技術と物理的なストラクチャーが結合しており、随時「ツイート」して情報を送り出すのは、発電所、工場、機械、ロボットなどの「物理層」となる。それらの物理層がリアルタイムに送り出してくる情報を瞬時に入手、解析してその都度必要な対応をすることで、ライフサイクルを通じ、エネルギーの不可逆的なロスを最小限に抑えることが必要なのだ、とパテル氏は言う。

■90億人時代を担う若い世代へ

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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