普及停滞する太陽熱利用、後発エネルギー設備相手に苦戦

かつては戸建住宅の屋根に多く設置されていた太陽熱温水器だが、近頃は見かけることが減った。太陽熱利用設備は使用時に温暖化ガスを出さず、しかもエネルギー変換効率に優れる「エコの優等生」だ。しかし、ガスで発電と給湯を行う「エネファーム」や太陽光発電など、後発のエネルギー設備の普及を尻目に設置台数は低迷を続けている。(オルタナ編集委員=斉藤円華)

■エコの優等生、費用面で劣る

太陽熱温水器(Wikimedia Commons.)
太陽熱温水器(Wikimedia Commons.)

太陽熱利用設備は、屋根などに集熱器を据え付け、太陽の力で温水を作り出すタイプのものが代表的。エネルギー変換効率で、太陽光発電が10数%なのに比べ、太陽熱利用は40〜60%と大きく優れる。またソーラーパネルが出力1キロワット当たり約10平米の面積を要するのに対して、太陽熱温水器の設置面積は3〜4平米程度で済むという特徴もある。

ところが近年は普及が低迷。設置台数が爆発的に増えた1980年台には年間約80万台に上る年もあったが、現在はその20分の1、同4万台弱にとどまっている。

「PR活動などの手は打っているが、クリーンヒットが出ない」。太陽熱利用設備の業界団体「ソーラーシステム振興協会」の担当者は、伸び悩みの打開策について「手詰まり感」を隠さない。

「10年頃前までエネルギー価格の長期低落傾向が続いた。さらにエコキュートやエネファームといった後発のエネルギー設備に対して費用面で劣り、近年は太陽光発電も急増している」(担当者)

家庭向け太陽熱利用設備の導入費用は20〜80万円だが、耐久年数は費用回収年数と同じ15年ほど。つまり費用回収を終えるのと同時に設備更新が必要となるため、光熱費の節約効果を期待しにくい。担当者は「耐久年数を超えれば必ず壊れる、というものではないが、イニシャルコスト面で他のエネルギー設備に太刀打ちしにくい」と話した。

■スマートコミュニティへの導入も

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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