現場にゆだね、当事者意識をはぐくむ――ダイバーシティの現状(5)[山岡 仁美]

ならば、どうするのか?育休復帰者、時短勤務者、プロパー勤務者含め、全員にやりかたを委ねるということです。ただし、それが一部のスタッフに負担がかかる偏りや、お互いに寄りかかり過ぎて生産性に影響が出るなどした際には、管理職が介入するということです。

委ねられるということは、育休復帰者、時短勤務者を含む忙しいチームにとって、面倒なことなのかもしれません。しかし、それが、全員がダイバーシティへの当事者意識をもつことに繋がり、プロパー勤務者にとっては育児や介護で忙しない同僚に対して、時短勤務者にとっては自分のタスクをフォローしてくれるスタッフに対して、自分事として捉え、チーム力も上がり、モチベーションも生産性も向上されるのです。

考えてみれば、自分自身でも、日常業務の中で、当たり前のように、委任や委譲をしています。そして、それらは、人財育成のコンサルティングや研修、ワークの中で、クライアント各社様にも推奨し続けていることです。

そう、ダイバーシティや女性活躍は、その推進に向けて、特別なマネジメントや手法を駆使することに力を注ぐのではなく、日常で当たり前化することが大きなポイントになるのです。

会社が作った人事評価制度をいち管理職が変えることはできません。でも実際に評価をするのは管理職。時短だから評価がマイナスになるのではなく、時間内での仕事の質はもちろんのこと、時短勤務者の委譲のしかたを評価します。

プロパー勤務者の残業量の多さを評価するのではなく、当人の仕事の質を評価します。自分で処理するのか、時には別人に再委譲する力量、重複するタスクとのプライオリティの見極め方など、委譲されたことをどう進めたのかも含めて判断します。

マネジメントに固執せずに会社の制度や仕組みを使いこなす、しなやかな裁量が、管理職に求められる最大の要件の一つと言えます。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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