記事のポイント
- 国連GCNJはグリーンバンスメカニズムの構築に向けたガイドを公表した
- グリーバンスメカニズムは、企業の人権尊重の取り組みにおける中核的な制度
- 人権侵害を受けやすい人の声を可視化し、救済する仕組みだ
国連グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンの働きがい・人権部会は9月12日、「グリーバンスメカニズム」の構築に向けたガイドを公表した。グリーバンスメカニズムとは、人権侵害の影響を受けやすい労働者・消費者・地域住民などの声を可視化し、救済するプロセスを指す。企業の人権尊重の取り組みにおいて中核をなす制度だ。(オルタナ輪番編集長=池田真隆)
同ガイドでは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、ライツホルダー(人権を侵害されている人や侵害される可能性がある人)との対話を軸にしたグリーバンスメカニズムの構築方法をまとめた。
グリーバンスメカニズムとは、企業活動によって影響を受けるライツホルダーの声を拾い、その声に企業が対応し、救済に至るまでのプロセスを指す。
単に苦情を受け付ける窓口ではないことが特徴だ。被害が小さいうちに気付き、問題を是正し、再発防止を図ることが重視だとされている。
人権デューディリジェンスと並び、グリーバンスメカニズムは、企業の人権尊重の取り組みにおける中核的制度だ。
■「声」を人権リスクに結び付けて分析を
同ガイドが提案した、実効性のあるグリーバンスメカニズムを構築するための6ステップは次の通り。
- 既存メカニズムの把握と点検 — 社内外にどのような声の窓口があるか、どの程度ライツホルダーの声が届いているかを調査する。
- 声が届いていないライツホルダーの特定 — 弱い立場、アクセスが困難な人たちを洗い出し、新たな窓口や改善策を設置する。
- 届いた声を「人権」の観点から分析 — 受けた苦情などを、人権侵害か人権リスクに結びつけて分析し、実効的な対応を設計する。
- メカニズムを通らない声も把握する — 正式な窓口だけでなく、非公式なルートの声にも注意を払い、それを制度設計・対応に反映させる。
- 利用可能性の向上と支援 — 多言語対応、アクセスツール、報復防止など、利用者が声をあげやすい環境づくりを行う。
- 制度の改善 — ライツホルダーのフィードバックを活かし、実際に制度が機能しているかを評価し、改善を重ねる。
同ガイドには、実際にグリーバンスメカニズムを構築した企業の事例も載っている。
不二製油グループは、パーム油の調達ポリシーにグリーバンスメカニズムを明記した。サプライチェーンに関わる農園での人権・環境問題を是正する取り組みを市民社会組織と協働して進める。
グループレベルでの苦情受付を拡大し、声が届きにくい現場にもアクセスできるよう改善を図る。
ANAホールディングスでは、外国人労働者を対象にしたオンラインアンケート(11ヵ国語対応・匿名性あり)で生の声を収集し、苦情窓口「Ninja」を設置した。24時間365日アクセス可能で、グループ外のサプライチェーン上の労働者も対象とし、言語対応や周知活動を強化している。