サラヤが学生向けイベント、持続可能な社会を次世代と築く

記事のポイント


  1. サラヤは2025年6月、学生向けイベント「持続可能な共生社会に向けて」を開催した
  2. 一貫してビジネスを通じた社会課題の解決に挑戦してきた創業以来の歩みを、学生たちに紹介
  3. 未来をつくる世代と共に「環境問題を自分ごと化」することの大切さについて考える時間となった

イベントに参加した学生たち

「世界の衛生・環境・健康の向上に貢献する」を企業理念に掲げ、ビジネスを通じた社会課題の解決に取り組むサラヤ(大阪市)。同社は今夏、新たな学生向けプロジェクトを始動した。気候変動や生物多様性の危機が深刻化するなか、次世代を担う若い世代に、「自分ごと化」してもらうきっかけを提供し、持続可能な社会の実現を目指す。

サラヤは2025年6月、 NPO法人 ThePeaceFront (ザ・ピース・フロント、東京・ 渋谷)とともに、学生向けイベント「持続可能な共生社会に向けて」を開催した。

第一弾のテーマは、「豊かな自然が残るボルネオ島の環境保全」だ。環境問題や国際協力に関心がある大学生14人が参加した。

ザ・ピース・フロントの新谷和実代表は、「環境問題に関心を持っていても「ネットの情報が正しいのか分からない」「誰に聞いたら良いか分からない」という学生は多い。 だからこそ、リアルな情報に触れる機会をつくりたかった」と語る。

サラヤは1952年の創業以来、一貫してビジネスを通じた社会課題の解決に挑戦してきた。

今回のイベントでは、同社の廣岡竜也・広報宣伝統括部統括部長が、その歩みを学生たちに紹介した。

先陣を切って課題に取り組む

サラヤの取り組みを紹介する廣岡竜也・広報宣伝統括部統括部長

サラヤ創業の原点は三重県熊野市にある。創業者・更家章太は林業を営む家系に生まれ、熊野の豊かな自然のなかで育った。

廣岡部長は「木は切って終わりではない。木を植え、森を育て、次の世代に受け継いでいく。自然と向き合わなければ林業は続かない。自然への感謝がサラヤの根幹にある」と説明する。

サラヤはこれまで、日本初の製品を数多く世に送り出してきた。赤痢が猛威を振るう中、同社は1952年、日本で初めて薬用石けん液と専用容器を発売し、衛生習慣の定着に貢献した。

高度経済成長期の70年代には、合成洗剤の普及で水質汚染が深刻化した。そこで同社は71年、ヤシの実由来の洗浄成分を使用した「ヤシノミ洗剤」を発売。82年には、キッチン用洗剤として初めて詰め替えパックを導入し、容器を捨てずに繰り返し使う習慣も広げた。

その後も、社会課題に正面から向き合う姿勢は変わらない。2004年には、洗剤原料の一つであるパーム油がボルネオの森林破壊につながっていることを知り、環境保全プロジェクトを開始した。

自社のパーム油使用量はごくわずかだったが、「使っている以上は責任がある」(廣岡部長)との思いから、ボルネオの環境と野生生物を守る活動に踏み出した。

翌05年には、日本企業として初めてRSPO(持続可能なパーム油円卓会議)に加盟。07年からは、「ヤシノミ洗剤」 をはじめとする対象商品の売り上げ (メーカー出荷額)の 1%を環境保全活動に寄付している。

最近では、「第3の洗浄剤」 と呼ばれる天然界面活性成分ソホロを日本で初めて量産化するなど、サラヤは持続可能な社会の実現に向けた挑戦を続けている。

「環境問題を引き起こしているのは人間だという自覚を持たなければいけない」

「生態系は「ざる」のようなもの。ゾウやオランウータンを網の交点のひとつとして、交点の一つや二つが切れてもざるは崩壊しない。しかし交点が失われていくと、ある時、突然に全体を支えられず崩壊する時がくる。生態系が崩壊した世界では、人間の生活基盤も崩れてしまうかもしれない」(廣岡部長)

生産者の意識徐々に変化も

学生たちはグループに分かれ、ボルネオの問題を広めるためのアイデアを出し合った

講義後、学生からは活発に質問が飛んだ。

「法律で森林伐採を規制すべきではないか」という声に対し、廣岡部長は「たとえ州法で保護を定めても実効性は乏しいのが現状だ。しかし、国際社会の注目が集まることで、現地の意識は少しずつ変わっている」と説明した。

生産者の意識の変化に質問が及ぶと、「特に経営者や政治家の意識は、この数年で変化している」(廣岡部長)という。

「パーム油生産の約40%を担う小規模農家は資金やノウハウが不足しており、RSPO認証取得は容易ではない。そこでサラヤは小規模農家を束ねて認証取得に取り組む団体を支援している」と続けた。

学生からは「環境価値が理解されない時代もあったが、 なぜ40年間もヤシノミ洗剤を売り続けられたのか」という質問も出た。

廣岡部長は「オーナー企業だったからこそ信念を貫けたと思う。商品を信じ、「いつか理解される」と、営業とともに粘り強く続けた。ボルネオの問題は規模が大きく解決は難しいが、だからこそ、私たちはあえて挑戦したい」と力強く語った。

ボルネオの問題どう広めるか

イベントの後半では、学生たちがグループに分かれてディスカッションを行い、ボルネオの問題解決につながるアイデアを発表した。

「ヤシノミ洗剤を広めるにはどうするか」というテーマに対して、「環境面だけでなく、手肌にやさしいという品質面も強調したら良いのでは」という意見が出た。「いまはSNSを通じて発信していくことが重要だ」という声もあった。

「関心のない人を巻き込むには」というテーマでは、「商品を手に取った際に背景が分かるように、QRコードを付けてはどうか」「学校のプログラムに組み込んだり、現地のNPOと協力すれば広がりやすいのではないか」といったアイデアが示された。

イベントを終えて、学生たちは「社会課題を自分たちの問題として考える時間になった」と振り返った。

廣岡部長は「若い世代は 「ソーシャルネイティブ」だ。 自分たちが感じたことをSNSで発信し、それが波紋のように広がって大きなうねりになる可能性がある」と期待する。

「ボルネオの問題を知ったことがきっかけで、どんな動きが起きていくのか。コミュニティや同じ価値観を共有する人のネットワークが、これからますます重要になる」

「学生の皆さんはまだサラヤの商品を買う世代ではないかもしれないが、未来の消費者であり、社会を変えていく存在だ」と呼び掛けた。

サラヤが70年以上にわたり歩んできた衛生と環境への挑戦は、学生たちに「環境問題を自分ごととして考えること」の大切さを示した。未来をつくる世代がここからどんな一歩を踏み出すのか。今回の対話は、その一歩となった。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #サステナビリティ

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