記事のポイント
- 社会的課題解決に向けてNPOの価値と可能性の再評価が重要に
- NPOには5つの本質的な価値があり、社会全体のR&Dを担う力も持っている
- 主要企業が社会課題解決に取り組む今、NPOは「課題解決のファシリテーター」役に
近年、インパクト・スタートアップやインパクト投資が世界的に急成長し注目を集める一方で、NPO(NPO法人や公益法人)の役割への関心が薄れつつあるのではないかと懸念する声が聞かれている。(特定非営利活動法人日本ファンドレイジング協会代表理事=鵜尾 雅隆)
実際、学生や若い世代は、就職や起業の選択肢としてNPOよりもインパクト・スタートアップを選ぶ傾向が強まっている。しかし、社会課題はビジネス的手法だけで解決できるものではなく、行政の対応にも限界がある。いまこそ改めて、現代社会におけるNPOの価値と可能性を再評価することが重要である。
NPOには、社会において発揮すべき5つの本質的な価値がある。
一つ目は、「人々とのつながりを生み出す力(空間・関係創造力)」だ。2017年、英国で世界初の「孤独・孤立問題担当大臣」が任命され、孤独・孤立の解消におけるNPOの役割を「決定的に重要」と位置づけた。
NPOは人々に寄り添い、支援者を巻き込みながら、長期的で持続可能な助け合いの仕組みを現場に築く力に優れている。社会課題は、直接的な解決策よりも「寄り添い、つながりを持ち続けること」で状況が改善するケースがよくある。
二つ目は、「共感による持続的支援を生み出す力(共感マネジメント力)」。社会には行政が手をつけにくく、またビジネスとしても成立しづらい課題が多く存在する。その一例が、犬猫の殺処分問題、生活困窮者支援、難民支援などである。
こうした分野では、寄付や共感的な支援の意思を醸成し、現場と社会をつなぐ「共感マネジメント」が不可欠である。共感を原動力とした持続的支援を組織化できることは、NPOならではの本質的な強みだ。