オルタナ総研統合報告書レビュー(44):ソフトバンクG

記事のポイント


  1. ソフトバンクグループは、「責任あるAI」に取り組む
  2. 「AI倫理ポリシー」「AI倫理委員会」、「AIガバナンスワーキンググループ」を制定した
  3. AI倫理・ガバナンス教育は、社内に留まらず、社会全体の責任あるAI社会の実現を目指す

ソフトバンクグループは、「責任あるAI」を、最も優先度の高いマテリアリティとして特定し、適切なグループAIガバナンス体制の確立を目指しています。AI倫理・ガバナンス教育活動や知見はビジネスとしても活用され、自社にとどまらず、社会全体のAIガバナンス水準の向上を通じて責任あるAI社会の実現を目指しています。(オルタナ総研フェロー=室井 孝之)

ソフトバンクグループは、責任あるAI社会の実現を目指す

ソフトバンクグループは、常に情報革命の最先端に立って人々を幸せにすることを使命としています。現在その最先端にあるAIの恩恵を広く社会全体が享受できるよう、ASI(Artificial Super Intelligence:人間の知能を超えた超知能)の実現に向けて取り組むとともに、世界で最もAIを活用するグループを目指し、責任あるAIの実現に向けた取り組みを推進しています。

ソフトバンクグループはアニュアルレポート2025の中で、優先して取り組むべきサステナビリティに関する重要課題(マテリアリティ)を次の10項目に特定しています。

「責任あるAI」「気候変動」「人的資本」「プライバシー保護/情報セキュリティ」「投資先のサステナビリティ」「コーポレート・ガバナンス」「デジタルインクルージョン」「人権の尊重」「自然資本の保全」「サプライチェーンのサステナビリティ」

その中で同グループは、「責任あるAI」を最も優先度の高いマテリアリティとして特定し、適切なグループAIガバナンス体制の確立を目指しています。

具体的には、次の7点です。

1.「ソフトバンクグループ行動規範」に「責任あるAI」に関するアクションステートメントを追加し、ソフトバンクグループの全役職員を対象とする研修を通じて社内浸透を図っている。

2.AIを適切に活用し、顧客に安全・安心なサービスを提供するため「ソフトバンクAI倫理ポリシー」を制定し、独立した専任部門を中心に関係部門・関係者と連携し、「AIガバナンス」を推進している。

3.その一環として2024年4月、ソフトバンクグループの関係部門および主要なグループ会社で構成される「AIガバナンスワーキンググループ」をグループ・リスク・コンプライアンス委員会の傘下に設置した。

4.同年同月、社外有識者が参画する「AI倫理委員会」を設置し、国内外の規制動向や課題などを踏まえた議論を行っている。

5.AI利用者・開発者・提供者それぞれに向けた「ガイドライン」を制定し、社内でAIを開発・導入する際は、「情報セキュリティ委員会」による事前評価を行うことでリスク低減を図る仕組みを整えている。

6.AI倫理・ガバナンス教育に注力している。

具体的には、年1回のeラーニング研修、年2回の勉強会、毎月配信のメールマガジンなどを通じて、社員のリテラシー向上を図っている。

7.これらの活動や知見はビジネスとしても活用されており、自社にとどまらず、社会全体のAIガバナンス水準の向上を通じて責任あるAI社会の実現を目指している。

次回の統合報告書では、社会全体の責任あるAI社会の実現を目指す同グループとして、その具体例を開示してはいかがでしょうか。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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キーワード: #AI

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