「サステナビジネス戦略5か条」(上)時間軸で戦略を分ける

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記事のポイント


  1. 儲かるサステナビリティは確実に存在するが経営の意思と戦略が重要だ
  2. 構造を理解し市場を見極め、優先順位をつけて経済合理性の高い領域から取り組む
  3. サステナビリティビジネスで儲けるための実践的な5つの指針を紹介する

儲かるサステナビリティは確実に存在する。しかしサステナビリティ・ビジネスで儲けるには、経営の意思と戦略が重要だ。時間軸ごとに異なる勝ち筋を組み合わせ、市場を見極め、優先順位をつけて経済合理性の高いところから戦略的に取り組む必要がある。そこで、「サステナビリティ・ビジネスで儲けるための5か条」を、上・中・下の3回に分けて紹介する。(サステナビリティ・ビジネス戦略家=磯貝友紀)

サステナビリティ・ビジネスで儲けるための5つの戦略を紹介する

■儲かるサステナビリティの5つの戦略

私は25年間、アフリカや東南アジア、欧州、日本でサステナビリティ・ビジネスに関わってきた経験から確信しています。

「儲かるサステナビリティ」は確実に存在する。

ただし、それは偶然生まれるものではありません。時間軸ごとに異なる勝ち筋を組み合わせ、市場を見極め、優先順位をつけ、経済合理性の高いところから戦略的に取り組んでいく。そのような経営の意思と戦略があって、初めて実現するものです。

これから3回に分けて、サステナビリティ・ビジネスに取り組む際の具体的な指針として、「サステナビリティ・ビジネスで儲けるための5か条」をご紹介したいと思います。

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サステナビリティ・ビジネスで儲けるための5か条

  • 第1条: 短期で稼ぎ、中期で市場を取り、長期でビジネスモデルを作る
  • 第2条: スケール――市場を見極める
  • 第3条: マージンを作る
  • 第4条: 未来のコストを下げる技術に投資する
  • 第5条: COI (Cost of Inaction: やらなかった場合にかかるコスト)を考慮する

■第1条: 短期で稼ぎ、中期で市場を取り、長期でビジネスモデルを作る

今回は、その第1条、「短期で稼ぎ、中期で市場を取り、長期でビジネスモデルを作る」について説明します。

■サステナは足元で利益を生み出すビジネスになった

サステナビリティは「中長期の取り組み」と言われることが多くあります。そのため、どうしても将来の理想ばかりを語り、なかなか利益につながらない取り組みが増えてしまうことがあります。しかし、そればかりを続けていると、経営から「いつまでかかるのか」と言われ、最終的には予算を削減されてしまうことも少なくありません。

今は状況が変わってきています。サステナビリティの領域でも、すでに足元で儲かるビジネスが数多く生まれ始めています。

ですから、まず、「足元で儲かるものはしっかり足元で稼ぐ」という発想を持っていただきたいと思います。

短期の視点では、すでに利益を生み出せる領域を確実に取りに行くことです。

例えばEVバッテリーは、その代表例と言えるでしょう。すでに足元で収益を生み出しているサステナビリティ・ビジネスです。

同様の例は他にもあります。例えばヒートポンプです。ヨーロッパではガスボイラーからヒートポンプへの置き換えが急速に進み、市場は大きく拡大しています。再生可能エネルギー電力を長期契約で調達する企業向けPPA(電力購入契約)や、電力系統の安定化を担う蓄電池ビジネスなども、すでに大きな市場を形成し始めています。

また、日本でも新しいモデルが生まれ始めています。

例えばパナソニックの自由に選べる家電プラン「noiful(ノイフル)」のように、家電を「所有」ではなく「利用」で提供するサービスは、循環型ビジネスの一つの形です。こうしたモデルは、大手デベロッパーなどと連携することで、今後急速に拡大する可能性を秘めています。

つまり、サステナビリティはもはや「将来の理想」ではなく、「足元で利益を生み出すビジネス領域」になりつつあるのです。

■中期で面を取る

二つ目に大事なのは中長期的な目線です。サステナビリティは、足元で儲けることだけを考えるのではなく、中期で「面を取る」という視点が大事になります。

例えばアフリカです。2050年には、世界人口の約4分の1がアフリカ大陸に居住すると言われています。その巨大な市場をどのように取りに行くのか。ちゃんと面を取りに行くための投資ができているのか。

もしくは、アジアや日本、そして先進国で起きてくる新しいサステナビリティ市場です。今は「儲からない」「財務的にはトントン」かもしれないけど、成長市場において、他社に先駆けて面を取りに行けているのか、そのために今、何をすべきかということも考えていただきたい点です。

■未来の新しいビジネスモデルを作る

三つ目に重要なのは、長期的に、「未来の新しいビジネスモデルを構築する」ことです。

例えば製造業にとって、これはすでに多くの企業が検討していることだと思いますが、これまでのように「製品を作って売る」「機能性によって付加価値を高めて売る」というビジネスから、別の形で付加価値を生み出すモデルへの転換が求められています。

こうした方向性は、さまざまな要請や圧力によって、すでに多くの企業で検討されているはずです。

サステナビリティの圧力も、同じ方向を指しています。その背景にあるのは、原材料の枯渇という問題です。さらに近年は、地政学的リスクの高まりによって資源調達の不確実性も増しています。こうした状況を踏まえると、企業は資源に依存するビジネスモデルから脱却し、「脱資源依存型」のビジネスへと転換していかなければなりません。

つまり、限られた資源を大量に投入して製品を作り続けるモデルから、より少ない資源でより高い価値を生み出すモデルへと移行していく必要があるということです。

その際に重要になるのが、例えばデータビジネスです。データを活用しながら資源や製品の利用を最適化し、より効率的に価値を生み出すビジネスモデルは、今後ますます重要になっていくでしょう。

もっとも、このようなモデルを構築するには時間がかかります。したがって、こうした取り組みを着実に仕込み、将来に備えていくことが重要です。

足元で収益を確保すること、次の市場の面を取りに行くこと、そして自社そのものを変革していくこと。この三つを組み合わせることで、サステナビリティ・ビジネスを将来に向けて大きく成長させていくことが重要だと考えます。

磯貝 友紀

磯貝 友紀

合同会社アースネスト代表、サステナビリティ・ビジネス戦略家、著作家。民間企業や世界銀行、外資系コンサルティングファーム、投資ファンドなどで、25年間、サステナビリティ・ビジネス、Good Growth(善い成長)を国内外で推進。環境にも社会にも良い事業で、ちゃんと儲ける、新しい資本主義のあり方を実践。経営xサステナビリティx哲学の融合を目指す。著書に『必然としてのサーキュラービジネス』、『SXの時代』(共著)、『2030年のSX戦略』(共著)、『いまこそ、本物のサステナビリティ経営の話をしよう』(共著)。東京大学哲学科卒業、東京大学哲学修士課程修了。

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