その背景には、グローバリゼーションの波頭がありました。「南北問題」として知られる先進国と発展途上国の利害対立、海外攻勢を強めたグローバル企業に対する反発や、環境破壊に対する危機感、自然資源の奪い合いなどの要因がありました。ローマクラブによる「成長の限界」やレイチェル・カーソンの「沈黙の春」などの著作も議論に大きな影響を与えました。

それからほぼ30年が経ち、グローバリゼーションは格段に進みました。NAFTA(北米自由貿易協定、1992年)やTPP(2016年)に代表される多国間自由貿易の枠組みは、あらゆる資源や財の国際化を進めると同時に、特に途上国の貧困や環境問題を悪化させる危険性を常にはらんでいます。

こうした議論で、常に批判の矢面に立たされるのがグローバル企業です。グローバル企業にとっては、グローバリゼーションの負の側面は常に事業リスクになるとともに、途上国を起点とするサプライチェーンやレピュテーション(評判)のリスク要因として無視できません。

「サステナブル・ブランド」は、こうした負の側面や社会的課題に正面から向き合い、社会や市民と対話をし、ともに健全な発展を目指すための、一つの試みだと私は考えます。まさにブルントラント委員会の「持続的開発」と軌を一つにしています。

一方、ブランド構築の試みは日本では90年代から始まり、当初は製品ブランドの確立、その後はコーポレートブランドの価値向上に向けての動きが高まりました。この流れが、いま「サステナビリティ」と結びつき、「サステナブル・ブランド」あるいは「ソーシャル・ブランド」として、その重要性が注目されていると考えます。

製品ブランドの場合、企業のステークホルダーは主に顧客であり、コーポレートブランドでは顧客に加えて株主・投資家や金融機関、行政、学生などに広がりました。そして、「サステナブル・ブランド」のステークホルダーは従業員・労働組合、NGO/NPO、市民や市民団体、地域、大学など研究機関など格段に広がりました。

こうした多様なステークホルダーとの長期的な関係性の構築こそが、ISO26000で強調される「ステークホルダー・エンゲージメント」であり、企業の持続的な発展のために欠かせない作業なのです。

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