例えば最初から地域にお金があって、一流プロデューサーや制作会社がついてヒット映画を創ったとしても、それだけが成功と言えるでしょうか。自分たちで主体的に、苦労しながらも楽しんでゼロから創り上げたからこその価値があるということです。この取り組みが地域の他の団体からも注目されており、最初から予算ありき、開催が決まっていてやるよりも、本当に何かを自発的にやりたい人が考えて動いて参画していく方が良いのではないかと、地域イベントの在り方が見直されるきっかけになるかもしれません。

印象的なエピソードとして、この映画にはスポンサーの場所や商品などが随所に登場しますが、これはスポンサーとの契約や要求といったいわゆるプロダクト・プレイスメントではなく、監督が自ら映画に組み入れたものがほとんどとのこと。一番苦しい時に、志を買ってポンと大金を出してスポンサーになってくれた企業ほど見返りを求めず、ただじっと支えてくれた、そんなスポンサーへの「恩返し」なのです。この善意と善意のつながりもまた、この映画の隠れた見どころです。
ややもすると現在の資本主義経済は、短期にしろ長期にしろ、感動さえも、「いつかお金につながらなければ価値がない」という理論さえ成立してしまう世界です。そうしたなかで、資本主義経済さえも、この桑名の映画と同じく、人間のそれぞれの暮らしと、幸せのためにあるひとつのツールなのではないかということを、思い出させてくれました。どのような町にも、企業にも、そこに生きる・働く人々の、情熱やこだわり、感動、そして日々の生活があり、それ自体もまた貴重な価値であることを忘れないようにしたいものです。
クハナ! 9/3から東海地区先行上映中 10/6から全国ロードショー http://kuhana.jp/