石炭、石油、ガスなどからの投資撤退を表明する「ダイベストメント(投資撤退)宣言」が欧州で相次いで起きている。7月に入り、アイルランド下院が約1兆円規模に達する公的資金のダイベストメントを決め、英国教会やケンブリッジ大学も宣言した。現在、世界でダイベストメントを表明した機関数はすでに893に及び、運用資産総額は約691兆円を超した。(オルタナS編集長=池田 真隆)

アイルランド下院は7月12日、化石燃料ダイベストメント法案を可決した。同法案では、運用資産総額が約1兆円のアイルランド戦略投資基金に対して、今後5年以内に石炭、石油、ガスのすべての資産を売却することを命じている。
アイルランド上院は法案の可決を遅らせることをできるが、下院の決断を覆すことはできないため、この法案は成立したに等しいとされている。同国は、公的資金を化石燃料産業から完全にダイベストメントすることを決めた、世界で最初の国となった。
この動きは政府だけではない。イングランド国教会は投資先企業がパリ協定に整合した事業戦略を策定しない場合、2023年までにそれらの企業からの投資撤退を発表した。英・ケンブリッジ大学のクイーンズ・カレッジも宣言した。
ダイベストメントの動きは欧米から始まった。2010年頃から、NGOが気候変動の問題を呼びかけ、投融資のスタンスを変える金融機関が出てきた。現在、ダイベストメントにコミットしている金融機関などは893あり、運用資産の総額は約691兆円に及ぶ。
世界でダイベストメントキャンペーンを展開する国際NGO 350.orgのニコロ・ヴォジェヴォダ・ヨーロッパチームリーダーは、ダイベストメントの盛り上がりについて、「化石燃料への投資は経済的に採算が合わず、倫理にも反しているという考え方が広まっている証拠だ」と話した。