「アメ」と「ムチ」で 企業の方向転換促す

フランスのNGOは、倫理に反する活動や安全を脅かす活動をする企業を告発するキャンペーンを張ることが多い。方法は「アメとムチ」。SNSやメディアで企業を叩き、反響に驚いた企業が折れてきたら企業の方向転換を支援する。ところが政府が準備している法律で、NGOと企業の告発・協力関係に暗雲が漂い始めた。(パリ=羽生 のり子)

劣悪な環境で飼育されていたアンゴラヤギ ©PETA Asia
問題が告発されてすぐにGAPはモヘアの中止を決定した

米国に本部を置く国際NGOのPETA(動物の倫理的扱いを求める人々)が今年5月、南アフリカ共和国の飼育場でアンゴラヤギの非倫理的いを隠し撮りした映像をサイトで公開し、世界中にショックを与えた。

このヤギから採れるモヘアは、手触りが柔らかく美しい毛織物になる高級品だ。この映像を見たGAP、ZARA、H&Mなどの国際的なアパレル企業は先頭を切ってモヘア不使用を宣言した。その後、ユニクロ、Mangoなどの企業が追従し、100以上の国際ブランドが不使用を約束した。

隠し撮りは動物愛護団体がよく使う手法で、大きな反響がある。その手法を使う「L214」は、フランスで今一番注目されている団体だ。

団体名のL214は、仏農村法の動物保護の条項である。PETAは国際団体なので、アフリカや中国の飼育場の実態を暴露し、国際的な企業から方針転換を取り付けているが、L214は国内の養鶏場や食肉処理場での家畜の扱いを主に取り上げ、企業には方向転換を迫り、国には法律での禁止を求める。

L214に隠し撮りされた食肉処理場や養鶏場は、当局の検査が入り、営業停止や閉鎖を余儀なくされることもある。近年効果を上げたのは、ケージ養鶏卵の販売中止を求めるキャンペーンだ。その結果、フランスの大半のスーパーが2025年までにケージ養鶏卵の販売を中止すると発表した。

フランスでは日本のように、流通企業が自社農場を持つことはない。生鮮食品も加工食品も生産者から買い付ける。

消費者の要求を流通業界に伝えれば、スーパーが生産者に要求を伝え、生産状況が改善される可能性がある。

2018年2月に調査会社ユーゴヴが18歳以上のフランス人1千人に行った調査では、9割がケージ養鶏に反対だった。世論がここまで盛り上がったのは、キャンペーンのおかげだといえる。

※この続きは、オルタナ53号(全国書店で発売中)掲載の「世界企業/NGOのパワーバランス」でご覧ください。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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