「企業と社会の戦略的コミュニケーション」とは

■プレナリーセッション1「企業と社会の戦略的コミュニケーション」

本セッションでは、キーノートスピーチから引き続き登壇されたCarol Adams教授および福永朱里氏とともに、富岡正樹氏(サントリーホールディングス株式会社コーポレートサステナビリティ推進本部コーポレートブランド戦略部部長)、Raymond Shelton氏(コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス株式会社執行役員IR統括部長)、Daniel McFarlane講師(Thammasat University, Thailand)が「企業と社会の戦略的コミュニケーション」をテーマにパネルディスカッションを行いました。

まず富岡正樹氏から、サントリーホールディングスのコーポレート・コミュニケーションについて、経緯と具体的取り組み内容が紹介されました。

同社は「やってみなはれ」「利益三分主義(事業によって得た利益を「事業への再投資」「お得意先・お取引先へのサービス」「社会への貢献」に活用する)」という価値観を大切にして成長を続けてきたこと、2005年のCSR推進部設置のとき「水と生きる」という理念を掲げ、さらなる成長を目指して活動を拡充してきたこと、それをメディアとの連携のもと積極的に情報発信してきた結果、日経BP社の環境ブランド調査でも高い評価を得られるようになってきたことが報告されました。

海外売上比率が40%を超え、従業員の半数以上は海外にいるグローバル企業となったいま、これから海外でやるべきことが多くあり、今後も活動を拡充させていくということが説明されました。

続いてRaymond Shelton氏からは、コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングスのインベスター・リレーションズにおいて、いかにサステナビリティを経営に組み込むか、いかに持続可能に成長していくかが重要なテーマになっていることが紹介されました。

同社は2018年1月、コカ・コーラウエストやコカ・コーライーストジャパンなどの合併・統合により世界第3位のボトリングカンパニーとなりましたが、「大きくなるほどあなたの側へ」をキャッチフレーズとして、地域密着でCSV(Creating Shared Value)実現の取り組みを進めています。地域密着、顧客起点、品格、ダイバーシティをコーポレートアイデンティティとして、同社の成長のために健康・環境・コミュニティの3つの優先課題に取り組んでいくということが説明されました。

その後のパネルディスカッションでは、McFarlane講師から「SDGs、サステナビリティにとってレポートは有効だろうか?」という問いが示され、これに対して各パネリストがそれぞれの専門的見地から議論を行いました。

Adams教授から「SDGsの中でも自社にとって重要なものを選んで、レポートの中ではネガティブ・インパクトについても説明するべきである」、福永氏から「SDGsは改善のチャンス。またステイクホルダーリレーションとしてもいいチャンス」との指摘がなされました。

また会場からの「ネガティブ・インパクトについてのPush Back にどのように対応しているか?」との質問に対し、Shelton氏から「事実ベースで正直に対話するべきだと考えている」、富岡氏から「事実を伝えて自分たちの姿勢を問うことが必要である。またSDGsをベースに顕在化していない課題にも提案型の取り組みをしていくことが大切。新しいことに取り組むと抵抗もされるが、意見を取り入れつつ味方を作ることが大切」との答えが示されました。

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齊藤 紀子(企業と社会フォーラム事務局)

原子力分野の国際基準等策定機関、外資系教育機関などを経て、ソーシャル・ビジネスやCSR 活動の支援・普及啓発業務に従事したのち、現職。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了、千葉商科大学人間社会学部准教授。

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