パレスチナ刺繍と着物文化をつなぐ(生駒芳子)

駐日パレスチナ大使夫人もパレスチナ刺繍帯を装った

フェアトレードの活動を繰り広げている人は数々いるが、山本真希さんの活動の話を聞いた時には、フェアトレードの通常の意味合いとは少し異なる世界観を感じた。パレスチナに出かけて行って、現地の刺繍職人に着物の帯の刺繍を依頼するという活動─。そこには、いくつもの「貢献」「エシカル」の意味合いが層を成している。(生駒芳子)

まずは、パレスチナの女性刺繍職人の経済自立を支援するという意味合い。これは、途上国の人々の経済自立を支援するフェアトレードの本来の意義としっかり重なる。

第二に、伝統的な刺繍職人の世界を未来に繋げるという、クラフツマンシップ支援の意味合い。世界各国で、大量生産のファストな波に押されて、伝統工芸世界は、衰退の一途をたどっているが、パレスチナの刺繍職人も例外ではない。その刺繍職人たちに、新しい提案をし、現代に接続する物作りへと導くという活動は、国境を超えて、意義深いものがある。

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生駒 芳子(ファッションジャーナリスト)

ファッションジャーナリスト、アート・プロデューサー。VOGUE、ELLEの副編集長を経て2008年より「マリ・クレール」の編集長を務め、独立。ファッション、アート、デザインから、社会貢献、クール・ジャパンまで、カルチャーとエシカルを軸とした新世代のライフスタイルを提案。地場産業や伝統産業の開発事業、地域開発など、地域創生に数多く取り組む。2018年より、伝統工芸をベースにしたファッションとジュエリーのブランド「HIRUME」をスタートさせる。 アンダーグラウンド(モデル冨永愛個人事務所)代表、三重テラスクリエイティブ・ディレクター、日本エシカル推進協議会副会長、内閣府・消費者委員会委員、江戸東京きらり委員、東京2020ブランドアドバイザリーグループ委員、WEF(Women's Empowerment in Fashion)理事、認定 NPO 法人サービスグラント理事など。 連載:エシカルファッションの旗手たち

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