「障がい者も戦う姿を見せたい」と格闘技イベント

身体・知的・精神障がいなど様々な障がい当事者が運営・選手として参加する格闘技イベント「焔-HOMURA-」が2月10日、東京・練馬厚生文化会館で開かれる。キャパが小さいため、観客席は50人程度。今回は3回目の開催となる。(ライター・遠藤一)(敬称略)

「技よりパワーで圧倒したい」と意気込む翔(左)。練習会にて

ルールは基本的に総合格闘技ルール(手足による打撃・締め技が有効)となる。それぞれの選手で、コントロール出来ない身体箇所などが違うため、基本的に障がいの重い選手に合わせたハンディキャップルールが取られている。

例えば、一方が下半身を使えない場合は、相手も脚部を拘束する。また、麻痺箇所など危険な部位には攻撃しないなど、選手同士のマッチングごとにルールが変えられている。

今回出場する選手は脳性麻痺や、二分脊椎症という神経障害、精神・知的障がいを持つ者など。ワンマッチやエキシビジョンなどが用意されているが、メインは4人制のトーナメント。焔無差別級初代王座が決定する。

主催者は20年以上の鬱を持つ、精神障がいの中嶋有木(44)。中嶋は障がい者プロレス団体「ドッグレッグス」のスタッフ兼選手だったが、数年前からドッグレッグスは活動を縮小。2016年4月からは大会が開催されておらず、休止状態だ。

「色んな選手から『(大会を)やらないんですか』と聞かれていた」という中嶋。「障がい者が戦う姿を見せるという流れを止めたくない。誰もやる人がいないなら、自分がやるしかないか」。昨年1月に第一回大会を旗揚げした。

ドッグレッグスは「プロレス」を掲げていたが「プロレスというのは基本的にはエンターテイメント。出来る人と出来ない人がいる。格闘技なら、身体を動かしたい人も、競技としてやりたい人も受け入れられる」と「格闘技」を名乗ることを選んだ。

出場選手の中で一番若手の翔(30)は、焔初出場。ドッグレッグスには3度の出場経験がある。二分脊椎症で下肢に麻痺があり、ジムや道場には通わず、自宅で配偶者と一緒に練習している。

現在、障がい者それぞれの程度に応じて練習受け入れを行っているジム・道場は、少数ながら存在する。しかし翔は「(ジムに)入るのは簡単だと思うけれど、入った後で周りから『なんで障がい者が格闘技やってるの』『やっぱり障がい者か、そんなレベルなんだな』と思われるのが嫌」だという。

「ヒザ立ちでの勝負だったら負けないくらい強くなってから、(ジムに)行きたい。障がい者だからなめられたくないというのが、子どもの頃からあった。障がいを恥じているわけではないけど、社会的に弱いとか邪魔者扱いのような目で見られないためにも強くなりたい」と語った。

「まずはこのトーナメントで優勝という実績がほしい。障がい者格闘技界を大きくしていきたいし、その中で頭張れるくらいになりたい。憧れられる存在になりたい、選手が少ないので」と語る翔。2月10日は自分のため、障がい者格闘技界のためトーナメントの舞台へ向かう。

焔・公式ツイッター:https://twitter.com/HOMURA_mma

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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