仏デモ13週目に:「個人」「女性」「SNS」が起点

■地球温暖化対策に反対ではない
デモは燃料税増税の反対を掲げていた。「富裕層は環境に悪いこと(飛行機の使用など)を多くやっているのに、収入に比べて微々たる環境税しか払っていない」との主張もあった。このため、低所得者層が地球温暖化対策に反対するという、「分断の構図」を指摘するメディアもあった。

だが、今回の署名文面をよく読むと、実は地球温暖化政策に反対している訳ではないことが分かる。「税金を上げるだけでは環境問題の解決にならない」として、「買い替えしやすいよう電気自動車向けの電気料金を下げよ」などの環境対策を政府に提案しているからだ。

政治家の中で「黄色いベスト」に好意的なのは、極右政党「国民連合」のル・ペン党首と、左派政党「不服従のフランス」のジャン=リュック・メランション党首だ。メランション党首は1月18日、党員に「黄色いベスト」を着てデモに合流せよと呼びかけた。

筆者は12月に一回、1月に入ってからは毎週パリの「黄色いベスト」のデモを取材した。2月2日、初めて「EU離脱」の横断幕とプラカードを見た。「国民連合」はEU離脱に好意的、「不服従のフランス」はEUが改革を受け付けなれば離脱もやむなしとしている。右派政党「人民共和連合」は明らかなEU離脱派だ。ところが幕を持った人に支持政党を聞くと、「無政党」と言う。

2019年2月2日のパリのデモで。フランスのEU離脱を主張するプラカード。「フレキシット。国家と民主主義の敵」下はマクロン大統領、EUのロゴ、フィリップ首相、カスタネール内相の写真

政治的な話をしたほかの人たちも「無政党」としか言わない。異なる政治色の人たちの混合世帯だから、政党を表明しないという暗黙の了解が参加者の間にあるのかもしれない。政党に吸収されるのを警戒する気持ちもあるだろう。

ヒエラルキーやリーダーを作らないのが「黄色いベスト」の特徴だ。大統領官邸にリーダーとみなされる何人かが交渉のために呼ばれると、「彼らは自分たちの代表ではない」と異議を唱える人も多かった。5月のEU議員選挙に向けて「黄色いベスト」で政党を作ろうとしている人が数人いるが、一部で勝手に作ることに反発する声が上がっている。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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