気候変動を単なる気象現象ではなく人類にとっての危機と捉える「気候非常事態宣言(CED)」が世界各国の地方議会に広まり、英国やカナダ、フランスなどが政府単位で宣言に踏み切った。19年7月末現在、CEDを行った国や地方議会は900を超えた。このほか小中高・大学などの教育機関や医療施設、博物館、美術館、企業がCEDを宣言する事例も増えた。日本では近々、環境経営学会がCEDに関する声明を発表する。(NZニュープリマス=クローディアー真理)

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CEDは、気候変動を人類の危機として認め、対処する計画であることを、他国やほかの地方議会、市民に伝えることに意義がある。CEDを行う地方自治体や国は、宣言を抜本的な対策への第一歩と捉え、宣言することを決めている。
2016年、豪州で始まったCEDムーブメントは各国で地方議会が中心となり、急速な広まりを見せてきた。6~7月にかけてニューヨーク、パリ、英国・マンチェスター、ドイツ・ケルン、シドニーといった大都市がCEDを行っている。

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地方議会が同ムーブメントを先導してきたのは、多くの場合、政治構造の規模がより小さく、地元における政策の決定権があるため、中央政府より意欲的な目標を掲げることができるためだ。気候非常事態への対処を啓発する豪団体、コミュニティ・アクション・イン・ザ・クライメート・エマージェンシー(CACE)のブリオニー・エドワーズ代表が、「地方議会による積極的なCEDが政府にも同様の動きを促すだろう」と予測した通り、5月、世界で初めて英国政府が国としてCEDを行うに至った。アイルランド、ポルトガル、カナダ、フランス、アルゼンチンといった国も英国に続いている。
7月末現在、CEDを行った国や地方議会は900を超えた。CEDムーブメントはさらに民間にも波及している。例えば、世界中の大学や専門学校などの高等教育機関7,000校以上がすでに宣言を行った。英国ではミュージシャン1,000人を含めた音楽業界関係者や企業、4つの国立美術館のネットワークであるテートといった芸術界にも、同ムーブメントは及んでいる。