問題解決のステップは「ストーリーテリング」で

■沖縄にケアが必要な子どもと家族を支える拠点

「 Kukuru+」について説明する大城尚志さん(右奥)

一般社団法人Kukuru(くくる/沖縄県那覇市)は、誰もが当たり前のことを当たり前にできる社会の構築を目指し、バリアフリー旅行支援など障がいを持つ人とその家族の支援を行う。「くくる」は、沖縄の言葉で「こころ」を意味するという。

介護者が楽しく、前向きな気持ちを持つことが、障がいを持つ人のより良い生活につながるという考えのもと、介護者の休息を確保する「レスパイト」にも力を入れる。

今年8月には、新社屋として医療的ケアが必要な子どもと家族を支える地域連携ハブ拠点「Kukuru+」を立ち上げた。リハビリ室やクリニック、ショートステイ病室、機械入浴室、研修室を備え、医療型短期入所や日中一時支援事業、多機能型重症心身障害児通所事業などを行う予定だ。

Kukuruの地域コーディネーター・大城尚志さんは、カイケツへの参加を通じて「いろんな人が集い賑わう場として、Kukuru+を継続的に運営できるようにしたい」と話す。

多様な人たちが出会う場として「日替わりオーナーカフェ」計画を進めるなか、設備や運営方法など、さまざまな問題が浮上してきた。

大城さんは「カイケツのワークショップに参加し、問題を整理し、どのように解決できるのか、一連の考え方を学ぶことができた。カフェの運営はこれからだが、より良い運営ができるように対策を実行していきたい」と意気込む。

■当事者の意見を反映し「地域防災力」を上げる

多様な住民の参画を重視し、「地域防災力」の向上に取り組むシンクタンクが、任意団体インクルラボだ。防災士でもあり、国際NGOの職員として20年以上、被災地や紛争影響国で活動してきた高橋聖子さんが2018年に設立した。

2019年4月には、高橋さんをはじめ、「誰一人取り残さない防災」に関心のある有志が集まり、「江戸川みんなの防災プロジェクト」を立ち上げた。

「防災には、『自助』『共助』『公助』の考え方がある。防災は、点では広がっていかない。区全体の取り組みにすることが必要だ」(高橋さん)

高橋さんは「スタッフみんなが専門性を発揮し、やりがいを持って仕事ができる環境をつくりたい」との思いから、解決したいテーマとして「事業の運営方法を策定してかかわる人たちの意欲と力を引き出す」を掲げる。

高橋さんが大切にしているのは、多様な人たちの参画だ。年齢や国籍、性別、障がいの有無などの違いを超えて、防災を「みんなのもの」にすることを目指す。例えば、車いすの避難経路を作成するには、一番よく知っている当事者の参画が不可欠だ。

高橋さんは「江戸川みんなの防災プロジェクトには、ボランティアで協力してくださる専門家の方が多い。だからこそ、みんながやりたいことが実現できる運営方法に変えていきたい」と語る。

「対策立案」のワークショップを終えて、参加者からは「現状把握が不十分で、行ったり来たりしてしまうが、グループで話し合うことで、新たな視点を得ることができた」「何か問題があると、すぐに対策をしてしまいがちだった。それでは対処療法的になってしまう。真因の追求が大事だということに改めて気付いた」といった声が寄せられた。

古谷講師は、「なぜその問題に取り組むのか、数値で現状を把握できているか。テーマ設定から対策立案まで、ストーリーがつながっていることが重要だ」と話す。「相手に分かりやすく伝えようと思うと、A3資料1枚、10分程度の説明がちょうど良い。11月の発表会までに対策の成果が出てくれば」と期待した。

■「引き算の広報戦略」で認知度高める

ワークショップ後は、オプショナル講座としてオルタナ編集長森摂による広報講座が開かれた。広報のポイントとして、「引き算の広報戦略」を挙げ、伝えたいことを絞っていくことの重要性を示した。

そのほか、「情報発信は定期的に」「トップの肉声を伝える」「ストーリーテリング(物語)」「活動には必ず『名前』」などの重要性を語った。その場でNPOのプレスリリースの添削も行い、情報発信のコツを伝えた。

<トヨタ自動車の「問題解決」の8ステップ>

1.テーマ選定:
解決すべき対象を決める。問題の重要性、問題が拡大傾向にあるか、問題の影響の大きさなど様々な観点から何を解決すべきか判断する。経営者の重要な役割。

2.現状把握:
現状の姿を客観的かつ定量的に認識すること。事実・データに基づいて伝えることがポイント。

3.目標設定:
何を、いつまでに、どのようにするのかを具体的に決める。マイルストーンを置いて、取り組みの経過を可視化する。

4.要因解析:
なぜを繰り返して、真因を探る。なぜを繰り返すことで、具体的な実施事項が出てくるので、論理的、合理的な解決策が期待できる。

5.対策立案:
対策内容を整理して、実行計画を立てる。5W1Hを明確にして、最も効果的と思われる対策案から手掛けていく。

6.対策実行:
計画通りにやりきることが大切。

7.効果確認:
対策内容への評価を行う。「対策をほとんど実施し、期待通りの成果が出た」「対策はほとんど実施したが、成果は得られなかった」、「対策はほとんど実施しなかったが、期待通りの成果が得られた」、「対策はほとんど実施せず、成果も得られなかった」の4つのパターンが考えられる。

8.標準化と管理の定着:
効果が出た対策の内容を標準化して、その後の取り組みに反映させていく。こうすることで、同じ問題の再発を防いでいく。

editor

オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

執筆記事一覧
キーワード:

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..