東日本大震災支援全国ネットワーク(JCN)主催、「JCNツアー2019『答えは東北にある』」が、12月10、11の両日福島県で実施された。東京電力福島第一原子力発電所では廃炉作業が行われる一方、視察先の一つでオーガニックコットンを栽培する「柳生菜園」では生物多様性を守る取り組みが続けられている。(オルタナ総研コンサルタント=室井孝之)
JCNは、東日本大震災における被災者、避難者への支援活動に関わるNPO、NGO、企業、ボランティアグループなど612団体が参加する全国規模の連絡組織である。
遠山賢一郎ふくしま連携復興センター事務局長のコーディネートによる訪問先は、富岡町の廃炉資料館、東京電力福島第一原子力発電所、楢葉町交流拠点ならはCANvas、広野町の旧廃炉作業拠点Jヴィレッジ、いわき市「オーガニックコットンプロジェクト」の柳生菜園の5施設である。
本稿では、東京電力福島第一原子力発電所の40年後の廃炉に向けた取り組みと、生物多様性を守るため無農薬による自然豊かなコットン畑を開墾する取り組みについて報告する。
「発電時にCO2を排出せず、地球温暖化防止の観点で自然に優しい発電方法」と謳われてきた原発は、稼働率向上という経営課題を優先する一方で過酷事故対策は先送りとなり、「経営層全体のリスク管理に甘さがあった」(東電ホームページ「事故の根本原因分析」)ため大事故を起こし廃炉に追い込まれた。
無農薬コットン畑は、いわき市北部四ツ倉地区にあり、30年前に東京から移住した福島裕氏が、ボランティアと共に、高齢農家に代わり耕作放棄地を生き返らせた柳生菜園~天空の里山~である。
天空の里山では、ストーブも風呂も自然エネルギ―の薪しか使用しない。福島氏は、「30年前は、山の上にも蛍がいた。今はモンシロ蝶もいなくなり、生物多様性は破壊的な状況だ。生物多様性の維持に努めたい。輸入品に比べ価格競争力は厳しいが、自然を守る為に続けたい」と語った。
「自然に優しい」はずの原子力発電所では、利益至上主義のもと発生した事故後の廃炉作業が進められ、同じ福島の地で自然を守り生物多様性を維持するための、無農薬コットン畑の取り組みが続けられている。
■汚染水は100万トン超