ゴールまで10年、SDGsにどう取り組むか

オーガニックフォーラムジャパン(OFJ)は2月6日、「SDGsライフスタイルビジネスフォーラム2020」の開催に先立ち、記念講演・開催説明会を東京ミッドタウン日比谷で開いた。森本英香・環境省顧問(前環境事務次官)、百瀬則子・中部SDGs推進センター副代表理事らが登壇し、SDGs(持続可能な開発目標)のゴールである2030年が10年後に迫ったいま、どう取り組むべきか議論した。(オルタナ副編集長=吉田広子)

パネルディスカッションで。会場には約170人が集まった

「第1回SDGsライフスタイルビジネスフォーラム2020――アウトサイドイン、サステナブルビジネスの新たなる幕開け」は2020年9月17-19日、東京都立産業貿易センターで開催される。「第5回オーガニックライフスタイルEXPO2020」と同時開催で、来場者は3万人を見込む。

開催に先立って開かれた記念講演・開催説明会では、森本環境省顧問、百瀬副代表理事が講演したほか、パネルディスカッションが行われた。ファシリテーターは森摂・オルタナ編集長が務めた。

パネルディスカッションのテーマは「ゴールまで10年、2020年のSDGsを考える」。SDGsが2015年9月に採択されると、多くの企業は自社の事業とSDGsの各目標との関連付けを行った。この先に期待されているのが、社会課題や外部の視点を起点にしたビジネスアプローチ「アウトサイドイン」だ。

らでぃっしゅぼーやを立ち上げた徳江倫明・OFJ会長は、「父は水俣病の原因となったチッソに務めていた。この問題に向き合うなかで、本業を通じて環境問題を解決する方法として農薬を使わない農業に行きついた。当時、SDGsはなかったが、まさに『問題解決型事業』」の創出だった」と振り返る。

入職後、水俣病対策に携わっていた森本環境省顧問は「環境省の原点は水俣病にある。環境省は弱いものの味方でないと成り立たない。当時は公害対策として規制が有効だったが、気候変動や海洋プラスチック問題などを解決するには、生活の構造や社会の構造を変えていく必要がある。持続可能な循環共生型の社会を目指す『地域循環共生圏』の考え方は、環境省からの新たな提案の一つ」と強調した。

ユニー・ファミリーマートホールディングス執行役員を経て、ワタミ顧問も務める百瀬中部SDGs推進センター副代表理事は、早くからレジ袋の有料化や食品ロスの削減に取り組んできた。

2007年6月にユニー中山店(横浜市、当時)で初めてレジ袋を有料化すると、売り上げが一気に12%も下がってしまった。5%は来店客が減り、7%はマイバッグに入りきらない分、買い物点数を控える傾向にあったという。

「店長も店員も店内を掃除したり、チラシを工夫したり、売り上げが落ちないように頑張った。主婦のパートが多いレジスタッフも、一生懸命プラスチックゴミ削減の意義を来店客に伝えてくれた」(百瀬副代表理事)

その結果、3カ月経つと売り上げは元に戻った。百瀬副代表理事は「きちんとコミュニケーションを取れば、レジ袋を有料化しても顧客は離れないことが分かった。企業は共感される商品やサービスを提供し、消費者はそれを支持することが重要だ」と訴える。

SDGsを達成するためには、行政も企業も消費者も一体となって取り組むことが必要だ。パネルディスカッションでは、それぞれの立場での情報発信の重要性も議論された。

百瀬副代表理事は「SDGsでどれか一つでも気になった目標があれば、小さなことで良いので今日から始めてみてほしい」と呼びかけた。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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