新型コロナという「黒い白鳥」とビル・ゲイツの引退

ファーウェイにとっては、昨年来のトランプ大統領によるファーウェイ排除政策に続き、今回の新型コロナウイルスが二羽目の「ブラックスワン」だったようです。

さて、新型コロナウイルスが米国で拡大するさなかの3月13日、米マイクロソフトはビル・ゲイツ創業者が取締役会から退任すると発表しました。ゲイツ氏は2008年に、それまで立ち上げていたビル&メリンダ財団での仕事に専念するために非常勤になりましたが、今回で完全引退です。

ビル&メリンダ財団は1996年に前身を創設し、その後、現在の名称に変えました。有名な投資家のウォーレン・バフェット氏が2006年、個人資産のうち83%(当時の額で約300億ドル)をゲイツ財団に充てたことで、ゲイツ財団の規模は一挙に倍増しました。ゲイツ夫妻による寄付も2018年までに360億ドルを超えました。

このような寄付は米国型フィランソロピー(慈善活動)の典型です。これに対して、日本ではよく「米国では寄付をすると税額控除を受けられるので多額の寄付が多い」と片づけられることが多いようですが、果たしてそうでしょうか。

日本ファンドレイジング協会の鵜尾雅隆・代表理事は、これを明確に否定します。「彼の功績は、単純に巨額の富を社会課題の解決に提供したということではなく、企業家の社会的活動の一つの大きな流れを生み出したことです」。

さらに「彼がリーダーシップをとることで、政府や国際機関、企業に影響を与え、ポリオなどの撲滅に向けた世界的なムーブメントを生み出したこと」、「バフェット氏とともに『ギビング・プレッジ』をスタートさせ、ビリオネアが資産の半分を社会貢献に回す国際的気運を生み出した点が高い評価に値する」と言います。

「ゲイツ氏は日本の寄付月間のキックオフイベントにも突然登壇してくれましたが、あれも(こちらからの依頼ではなく)ゲイツ側からのオファーでした。世界的に意味のあると考える動きに自分たちから動き出して変化を生み出すというところは、本当にすごいと思います」(鵜尾代表理事)。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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