APEC会場でも活躍した「食の絵文字」

料理と一緒に提示されるピクトグラムの卵(右)とえび
料理と一緒に提示されるピクトグラムの卵(右)とえび

11月10日から14日まで、世界各国から首脳ら約8000人が集ったAPEC(アジア太平洋経済協力会議)。彼らが宿泊した横浜市内の6ホテルに試験的に導入されたのが、「食材ピクトグラム(絵文字)」だ。日本語が分からない人でも、食物アレルギーや宗教上の理由で食べられないものが一目で分かる。開発したのは横浜市内の印刷会社だった。

「野菜だけのスープだと思っていたら、鶏のだしが入っていた」「サラダにかけたドレッシングには、卵が使われていた」――など、料理にどんな食材が使われているかは、見た目だけでは判断できない。

食物アレルギーを持つ人にとっては、重篤な症状が表れる場合もあり、命にかかわる問題だ。日本語がわからない外国人にとっては、口頭でのコミュニケーションも取りづらく、食事をなかなか安心して楽しめないという。

そんな課題を解決しようと、大川印刷(横浜市戸塚区)と、宗教や体質などの壁を越えて誰もが食を楽しめる社会を目指すNPO法人インターナショクナル(大阪市中央区)は、食材ピクトグラムの開発を進めてきた。

食材ピクトグラムとは、特にイスラム教やユダヤ教など宗教上、「食べてはいけないもの」がある人や、食物アレルギーによって「食べられないもの」を持つ人に向けて、料理の使用食材を示す絵文字だ。

今回は、卵、乳、小麦など、特定原材料と多文化に配慮して独自に選定した14 種の食材ピクトグラムを製作した。

開発のきっかけは、昨年、大川印刷に来ていた大学生インターンのアイデアだった。大学で、外国人留学生がいつも同じ料理ばかりを注文するのを見て、「料理に何が入っているかわからないから、他の料理が頼めないのではないか」と疑問に思った。そこから食材ピクトグラムの開発に至ったという。

アレルギーに関する表示は、食品衛生法によって定められ、特定原材料7品目については、容器包装された食品に対して表示義務が課せられている。だが、食材表示には統一基準がなく、店舗や食品メーカーが日本語や英語だけで表示していることが多いのが現状だ。

大川印刷の大川哲郎社長は、「APEC という海外からのお客様が集まるこの機会に、最新の食材ピクトグラムを横浜市内のホテルで使用し、横浜発のおもなてしとして、世界標準となることを目指したい」と意気込みを語る。(オルタナ編集部 吉田広子)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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