■私たちに身近な生物多様性 番外5
5月20日、札幌市の一軒家で3月末にネコ238匹が保護されたこと、多くはやせ細った状態で、他にも大量のネコの骨が散乱していたことなどが報道された。保護当時、室内の床はネコの糞尿で覆われ、きつい臭いが立ち込めていたという。不妊手術を怠ったため、飼育下で繁殖を繰り返し「多頭飼育崩壊」状態に陥っていたと考えられている。
ペットの多頭飼育については、2019年10月、都道府県、政令市、中核市など、全国の自治体担当者を対象として、環境省による「社会福祉施策と連携した多頭飼育対策推進事業」アンケートが実施された。
行政による取り組み状況や、把握している事例やその内容、対応等についての現場の担当者の回答が集計されている。
新型コロナ肺炎による「緊急事態宣言」による自粛のもと、ペットによる癒しや慰めを再認識されている方も多いと思う。
このような中で報道された今回の札幌市における「多頭飼育崩壊」の事例を見て、改めて上記のアンケート結果(末尾URL)を読み返してみた。一部をご紹介する。
<垣間見える飼育者の困窮と孤立>
●多頭飼育に関する課題として挙げられている課題(複数回答、n=120)
のうち最も比率の高いのは、
◇多頭飼育者が困窮しており、引き取りや不妊去勢の手数料を支払えない
というもので、85%が該当した。以下70%以上の頻出度合いを示したものとしては、
◇多頭飼育者が動物の所有権を手放さない
◇多頭飼育に関する情報が入ってこない
◇多頭飼育者とのコミュニケーションができない
などだった。
●多頭飼育者の属性としては、比率の高い順に(n=368)
70代以上31.5%、60代24.5%、50代18.8%、40代13.0%、30代4.6%で高齢者ほど比率が高く、同居者は、「なし」が45.9%で最も高く、次いで配偶者(のみ)が22.3%。ちなみに同居者していない親族についても「なし」、すなわち「身寄りのない」方が16.0%だった。
飼育者の男女別は、女性55.2%、男性43.5%(無回答1.4%)で女性のほうがやや高い。同じように近隣クレームから顕在化することの多い、いわゆるゴミ屋敷問題の当事者に男性が多いことと比べると明らかな差が認められるとのこと(検討会での委員の個別コメント /以下同じ)。