多頭飼育崩壊、背景に孤立と困窮(坂本 優)

●居住地は、密集地ゆえに顕在化しやすいなどの要素はあるかもしれないが、「住宅密集地」が46.2%と半数近く、「住宅郊外地」が、32.1%、農村山間地域が26.2%と続く。住宅規模は、中規模(2K~2LDK、3K~3LDK)が、56.8%、大規模(4K以上)22.8%、小規模(1R~1LDK)7.9%と続く。なお動物を山中の家やコンテナで飼う事例など自宅以外の場所で飼育する事例も複数報告されているとのこと。

●住宅内の衛生状態は「あてはまる」の比率が高い順に(単一回答 n=368)
◇室内で悪臭がする(した) 56.5%(ややあてはまる含めると 67.9%)
◇屋外まで悪臭がする(した) 40.2%(同上 57.6%)
◇食べ物やゴミが放置されている(いた) 34.2%(同上 48.9%)
◇窓がこわれているなど修理すべき個所を
修繕していない(いなかった) 30.4%(同上 45.9%)
◇室内で害虫が発生している(いた) 29.9%(同上 37.8%)
◇排泄物や排泄物で汚れた衣類や物が
放置されている(いた) 28.8%(同上 39.1%)
◇家屋内にカビが発生している(いた) 21.5%(同上 30.7%)
◇屋外まで害虫が発生している(いた) 20.7%(同上 30.8%)

●他人との関わりについては、(単一回答 n=368)
◇近隣住民との間でトラブル・苦情が発生している(いた)
「あてはまる」が54.3%(同上 72.2%)
そもそも
◇近隣住民との関りがない(なかった)が、23.9%(同上 45.9%)

●アンケートでは飼育者の経済状況、生活保護の受給状況、健康状態、依存症的な傾向などについても調査がなされている。経済的に困窮状態にある飼育者は約5割、生活保護の受給者は全体の2割程度、健康上の問題や障害を抱える飼育者も少なくないことなどが読み取れる。

また生活の乱れの質問項目では、アルコールやギャンブルへの依存はきわめて少なく、この部分はゴミ屋敷問題の当事者と違うようだとのコメントもあった。

●解決に至った事例では(複数回答 n=143)
◇飼育者の納得と行動変化が、49.7%と半数近くを占めるものの、◇飼育者の長期の施設入所、病院入院19.6%、◇飼育者の管轄地域外への転居11.9%、◇逮捕、行政代執行などの強制力ある法的措置での対応11.9%、◇飼育者の死亡8.4%などとなっており、飼育者の納得と行動変化に期待するだけでは解決できない実態も垣間見られる。やはり行政や地域での介入は残念ながら避けることができないようだ。

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坂本 優(生きものコラムニスト/環境NGO代表)

1953年生。東京大学卒業後、味の素株式会社入社。法務・総務業務を中心に担当。カルピス株式会社(現アサヒ飲料株式会社)出向、転籍を経て、同社のアサヒグループ入り以降、同グループ各社で、法務・コンプライアンス業務等を担当。2018年12月65歳をもって退職。大学時代「動物の科学研究会」に参加。味の素在籍時、現「味の素バードサンクチュアリ」を開設する等、生きものを通した環境問題にも通じる。(2011年以降、バルディーズ研究会議長。趣味ラグビー シニアラグビーチーム「不惑倶楽部」の黄色パンツ (数え歳70代チーム)にて現役続行中)

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