米でBLM運動再燃、ケンタッキー射殺事件きっかけ

米国で「BLM(黒人の命も大切)運動」が再燃し始めた。きっかけはケンタッキー州最大の都市ルイビルで黒人女性が警官に射殺された事件で、同州大陪審が微罪での起訴にとどめたこと。同市ではデモが過激化し少なくとも24人が逮捕されたほか、今年5月以来、再び全米各地に広がる兆しを見せている。(武田和代)

射殺されたのはケンタッキー州ルイビルに住むブリオナ・テイラーさん(26)。今年3月に米国が深夜、自宅に踏み込んだ警官とその場にいた交際相手との撃ち合いで、銃弾を受けて死亡した。テイラーさんは、今年9月の女子テニス全米オープンで大坂なおみ選手が着用した黒いマスクに日替わりで名前を入れた黒人被害者8人のうちの一人だった。

現地からの報道や英ガーディアン紙によると、関与した警官3人はすべて白人で、麻薬取引の疑いで裁判所から家宅捜査令状を得てテイラーさん宅に強制侵入。警官を強盗と誤解したテイラーさんの交際相手が持っていた銃を発砲したため銃撃戦になったという。

室内からは違法薬物は見つからず、テイラーさんにも犯罪歴がなかった。家宅捜査の住所の情報が誤りで、警察が捜査していた容疑者は既に拘束されていたなど、警察側の対応が問題になっていた。

しかし、大陪審は、隣人宅に発砲し「危険にさらした」として、重罪の中でも最も軽い罪で警官一人を起訴したものの、テイラーさん死亡に関しては罪に問わず、他2警官については不起訴とした。

テイラーさんの親族や活動家らは、関与した警官が殺人や故殺の罪に問われるべきだと主張し、大陪審の決定を不服としている。支援者による抗議デモが各地で展開されているが、一部では警察とデモ参加者との衝突が起き、逮捕者が出る事態になっている。

テイラーさんの事件から2カ月後の5月には、黒人男性ジョージ・フロイドさんが警察官に殺害される事件が発生。それ以来、黒人への人種差別と警察の暴力に対する抗議活動「Black Lives Matter」が全米各地で展開され、女子テニス全米オープンに出場した大坂なおみ選手もテイラーさんやフロイドさんら8人の名前が記されたマスクを着けて出場するなど、黒人差別撤廃を訴えている。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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