世代交代に悩む高齢のNPO代表

◆論説コラム

NPOが世代交代に苦しんでいる。1998年に特定非営利活動促進法(NPO法)が施行されて20年余り。それ以前にボランティア団体だったところも含め、法の施行を機にNPO法人として立ち上がったところは多い。会社の寿命は一口に30年といわれるが、実際にはもっと短く23年ほどだ。年々、時代の変化がスピードアップ、それに対応しきれず姿を消していく企業が増えている。さて、NPOの世界はどうだろうか。

NPO法人の数は現在、全国で51,047(2020年8月末)だが、近年では新設より解散が上回り、純減傾向にある。平均寿命は10年程度と企業に比べ短い。解散の理由は、「ミッションの達成」「取り組んできた課題解決」といった前向きなものもないことはないが、多くはネガティブで、「資金不足」「人材不足」「事業の失敗」「不正・不祥事」が目立つ。特に注目すべきは、この中に「世代交代の失敗」「代表(理事)の死去・病気」が含まれていることだ。企業の場合、財産や雇用義務があり、簡単に廃業・解散というわけにはいかない。そのためにピラミッド型の組織にして昇進昇給で次世代を育てていく。一方、NPOは財産もなく組織はフラットで、ミッションだけが支え。後継者育成など事業承継のための仕組みが弱いのは否めない。

そんな中で、タイミングよく、中間支援組織のNPOサポートセンターがこのほど「NPO事業承継サミット2020」と題するオンライン・イベントを開催した。大きな反響があったのは、それだけ世代交代に悩むNPOが多いからだろう。

実は、昨年、内閣府が「特定非営利活動法人における世代交代とサービスの継続性への影響調査」を実施しており、イベントはそれをベースにしている。

その調査によると、「NPO代表の58.7%が65歳以上」で、世代交代に対する意識は高いものの、「60%が準備はあまり進んでいない」ことが明らかになっている。

その理由としては、「適当な候補者が見つからない」が50.6%でトップ、次いで「代表交代の準備をする余裕がない」(20.3%)、「組織の運営体制が整ってない」(16.9%)が続く。「現代表の(資金などの)持ち出し、個人保証があり無理」「金融機関の信用が得られない」という財政的苦境をうかがわせるものもある。

代表は初代が57.1%もあり、強い思いで立ち上げたカリスマ的リーダーが、場合によっては自己資金を持ち出しながら頑張り、高齢になっても後継者は見つからないというNPOの過酷な実態が浮き彫りになっている。

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原田 勝広(オルタナ論説委員)

日本経済新聞記者・編集委員として活躍。大企業の不正をスクープし、企業の社会的責任の重要性を訴えたことで日本新聞協会賞を受賞。サンパウロ特派員、ニューヨーク駐在を経て明治学院大学教授に就任。専門は国連、 ESG・SDGs論。NPO・NGO論。現在、湘南医療大学で教鞭をとる。著書は『国連機関でグローバルに生きる』など多数。執筆記事一覧

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