書評『食・農・環境とSDGs』(古沢広祐著)

貧困、環境破壊、差別。他にも枚挙に暇ない。これまでの資本主義的な競争や成長型経済、これに続きマネー経済に変貌を遂げつつある金融資本主義。この競争一辺倒の経済や無限成長・拡大型の社会経済システムこそが、Gsの背後に隠れた諸悪の根源と大なり小なり断罪するのだから、これとは異なるシステムに転換するという主張は紛れもない正論なのである。

それよりも興味が尽きないのは、その「異なるシステム」である。当然の如く、これまでとは対極にある相互協調・安定型の社会経済システム。つまり、脱成長・自然共生社会システムと論じる。著者曰く「里山・里海ルネッサンス」。社会経済を見る際、これまで私たちは、第1次から第3次までに産業を区分け、この比率のバランスの推移で経済成長や社会発展を見定めてきた。

著者は考え方を転換させる。第1次産業を自然資本・生態系サービスとし、これを土台に第2次・第3次産業を自然・生命循環型産業、多元的サービスに再定義し、その上で成長から脱却した、自然と社会が共存・共生していく再生産・循環型システムに構想を練り上げる。

根底には、カール・ポランニーの経済システムの類型を援用して、互酬・再配分・交換のうち肥大化した交換を見直した社会経済システムの再構築が横たわる。「経済的改善→社会改善→環境改善」から「環境改善→社会改善→経済的改善」へ関係性も逆転する。

持続可能な共存・共生社会へのトータルビジョン

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