今年10月の菅首相「2050年カーボン実質ゼロ宣言」を受けて、いま日本の産業界の動きが急です。政府は2030年代にもガソリン/ディーゼル車の販売を禁止する方針であるほか、燃料電池車など「水素社会」に注目が集まっています。しかし、ひと口に水素といっても、「環境に良い水素」と「悪い水素」があるのです。(オルタナ編集長・森 摂)

水素は自然エネルギーで作るべきもの

今のところ、水素の主な利用法は「燃料電池」です。その原型は1839年にさかのぼる「古くて新しい」技術です。

燃料電池は、一方の電極に水素を、もう一方に酸素を送ることで化学反応を起こし、水と電気を発生させます。燃料電池車(FCHV)は、その電力を使ってモーターを回します。EV(電気自動車)とともに、「電動車」と呼ばれ始めたのもそのためです。

もちろん、駆動時にCO2を排出することはありませんが、その水素の「作り方」に問題があるのです。

例えば燃料電池の住宅版である給湯機「エネファーム」は、都市ガスやLPガスの主成分であるメタン(CH4)から取り出した水素と空気中の酸素を反応させて、電気をつくります。これで家庭内給電や給湯をしますが、水素を作る時にCO2が出るのです。

これらの化学反応は次の化学式で表せます。

水素製造時) CH4(メタン)+O2(酸素)→2H2(水素)+CO2(二酸化炭素)

発電時) 2H2(水素)+O2(酸素)→2H2O(水)

エネファームは大手ガス会社や石油元売りによる共同プロジェクトで2009年に販売が始まりました。日本ガス協会のホームページにも記述がありますが、「エネルギーを有効活用するので、省エネにも大きく貢献します」と書いてあるだけで、残念ながら、CO2を発生させるという記述はありませんでした。

現在、増えつつある燃料電池車用の水素ステーションも、天然ガスや石油(ガソリン、灯油、ナフサ)などの化石燃料から取り出した水素を利用しています(水蒸気改質法)。

「水素ステーションでは、横浜・大黒で脱硫ガソリンを原料に、横浜・旭ではナフサ、千住ではLPG(液化石油ガス)、青梅では天然ガス、市原では灯油を使ってそれぞれ水素を製造しています」(JHFCホームページ)。

つまり「脱炭素」「水素社会」と言いながら、その実態は、大きく化石燃料に依存しているのが現状です。

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