昨年の報告書では、長期的リスク(10年間以内)の上位5位は「異常気象」や「気候変動」などすべて環境リスクであった。今年もその傾向は変わらず、「感染症」が加わった形だ。
今後10年間で「最も可能性の高いリスク」としては、「異常気象」「気候変動」「人為的な環境破壊」「デジタル不平等」「サイバーセキュリティ対応の失敗」などが挙がった。
今後10年間で「最も影響の大きいリスク」はトップの「感染症」に次いで、「気候変動」「環境課題」「大量破壊兵器」「生活破綻(生活苦)」「債務危機」「ITインフラの機能停止」――と続いた。
これらの中で最も差し迫った脅威(2年以内に起こると予測)は、「雇用と生計の危機」「蔓延する若者の失望」「デジタル格差」「経済停滞」「人為的な環境破壊」「社会的結束の侵食」「テロ攻撃」だった。
3~5年以内に起こると予測した中期的なリスクでは、「資産バブル」「価格不安」「コモディティショック」「債務危機などの経済リスク」が目立った。

2008年から同報告書の日本語版の作成にかかわっているマーシュブローカージャパンの平賀暁会長は、「リスクはほかのリスクにも影響しているので、単一に見るのではなく、相関性を見るべき」と話す。
例えば、「感染症」は、国家間の分断や世界経済の脆弱化という地政学的なリスクを伴っている。報告書の作成に際して実施したグローバルリスク意識調査(GRPS)では、「国家の崩壊」と「多国間主義の崩壊」に陥る可能性が高いことが明らかになった。解決するために国際協調が強く求められる。
「気候変動」に関しても同じだ。GRPSの結果からも、気候変動は長期的リスクの中でも、最も影響力が高く、2番目に発生の可能性が高いリスクだった。「環境に優しい経済へのシフトは、パンデミックの収束まで待つことはできない」(平賀会長)と言い切った。