コロナ禍において、リモートワークが浸透するなどDX化が進む。一方で、情報漏洩のリスクが高まり、昨年と比べると情報が漏洩した企業は倍に増えているという。平賀会長は、「オンラインでのやり取りが増えることで、企業にはサイバーセキュリティの強化が求められる」と話す。
DX化は働き方改革などを推進する面もあるが、デジタルへの依存が高まることで新たな不平等を生む要因にもなっていることがGRPSの調査から分かった。社会の分断を増長させる背景に、「デジタル格差」もあるのだ。
平賀会長は社員のメンタルケアも企業に求められるようになるとする。「人と会わずに仕事をする日々が続くので、やる気が起きなかったり、うつになったりする可能性が高い。根性で乗り切ろうとするのではなく、勤務体系の見直しなどが必要になるだろう」。
さらに、デジタルの進歩は「若者の失望」リスクにもつながると警告する。就職氷河期に突入したので、多くの若者は「就職できない」「やりたい仕事ができない」という不満を抱えやすくなる。
「社会と自分自身に不安を抱き、国への不満につながる。SNSなどを使ったデジタルの乱用も広がるかもしれない。日本だけでなく、同様のことが世界各国で起きる可能性が高い」(平賀会長)
では、コロナからの復興はいかにして実現できるのか。
報告書の概要版ではこうまとめている。
「今回の危機の教訓が、リスクプロセス、能力、文化を強化することよりも、次のパンデミックに備える方法を意思決定者に伝えるだけであれば、世界は再び次の危機を予測するのではなく、前回の危機に備えた計画を立てることになるだろう」
「COVID-19への対応には、国、企業、国際社会のレジリエンス(復元力)を高めるために、以下の4 つのガバナンスを強化する機会でもある。(1) リスクの影響を全体的かつシステムに基づいた視点で分析する枠組みの策定 (2) 注目度の高い「リスクチャンピオン」に投資し、各国のリーダーシップと国際協力を奨励(3) リスクコミュニケーションの改善と誤った情報との戦い(4)リスクへの備えに関する官民パートナーシップの新たな形の模索」