3.11から10年、最大の鎮魂を考える

逆にいえば、私たちは大災害を「予期・予測・予防減災」しうる人類史上初めての世代でもある。

1960年代以降、地球表面がせめぎ合う十数枚の岩盤プレートで構成され、特に世界でも稀な4つのプレートの交叉点上にある日本列島では定期的な大震災が「必然」であることが判明した。(因みに列島上に50基余り設置された原発の計画はプレートテクトニクス理論に基づく新たな地球観と列島観が確立される前のことだ。)

さらに近年、衛星観測データも駆使して日本列島にかかる複雑なプレートの圧力と歪みを解析し、大地の経絡を探るかのように列島の「体癖」を可視化して、近未来に震災リスクが特に高まりそうなツボを発見する精度も高まった。

一方、社会の設計思想においても、大災害へのレジリエンス(耐性)を担保しうるような「自立分散型」のスキームへと大きく転換しつつある。

特に電力・水道などのライフライン(文字通りの「生命線」)は、急加速するRE/EVブームで「自宅の屋根で発電した電気をクルマの蓄電池に貯めて融通しあう」オフグリッド社会が現実的に見えてきた。

20世紀型の技術基盤では「分散化」はコストもかかり非効率だったが、いまや価格面でも優位に立ち、「電線が切れても発電所が止まっても、最低限の暮らしは担保しうる」ような強靭な社会を設計しうるところまで来た。(これを受けて電力会社も「電気を独占的に作って売る」ビジネスモデルから「分散的に作られる電気を効率的にシェアリングして、電気を使った生活の利便性と価値創造(UX)をコーディネートする」ビジネスモデルへと転換を迫られている。岡本浩ほか著『エネルギー産業の2050年――Utility3.0へのゲームチェンジ』など参照。)

■集住と人口増加を前提とした「集中型」インフラの限界

shinichitakemura

竹村 眞一(京都芸術大学教授/オルタナ客員論説委員)

京都芸術大学教授、NPO法人ELP(Earth Literacy Program)代表理事、東京大学大学院・文化人類学博士課程修了。人類学的な視点から環境問題やIT社会を論じつつ、デジタル地球儀「触れる地球」の企画開発など独自の取り組みを進める。著者に『地球の目線』(PHP新書)など

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