市民運動が奏功、無印良品出店断念

【画像】STOP無印良品キャンペーンのサイトより

国内や海外で「無印良品」を展開する良品計画は12月1日、同社が今年4月に公表したイスラエルへの出店計画を中止したと発表した。出店が実現すれば日本の小売店としては初のイスラエル進出となるはずだったが、この計画に対してはNGOや市民らが「STOP無印良品キャンペーン」を立ち上げ、各地で出店の見直しを求める活動を続けていた。商品ボイコットや資本の引き上げなどを求める「イスラエルBDS」の国内初の成功事例と見られている。

イスラエルBDSは、イスラエルがパレスチナ地域に対して行う占領・入植政策を止めさせるために行われる市民レベルの取り組みを指す。BDSとはBoycott(ボイコット)、Divestment(投資の引き揚げ)、Sanctions(制裁)の頭文字を意味し、パレスチナの171団体が2005年7月に発表した「国際法および人権という普遍原理の遵守までイスラエルに対するボイコットと資本の引き揚げ、制裁措置を行うよう求めるパレスチナの市民社会からの呼びかけ」により始まった。

呼びかけでは、イスラエルがパレスチナ地域で行う占領・入植政策に対して、これを非難する国連決議が繰り返され、かつあらゆる形での国際的な介入と平和構築が行われたにもかかわらず、今でもイスラエルによるパレスチナへの抑圧が続いていると指摘。その上で、かつて南アフリカのアパルトヘイト政策に対して、国際社会がボイコットや資本の引き揚げなどの多彩な手段でこれを撤廃させようとした経緯を踏まえ、イスラエルがパレスチナとの境界線に建設した分断壁を撤去し、パレスチナ人の基本的人権と自決権を尊重するまで、BDSを行うよう求めている。

現在、イスラエルに工場建設などの形で投資を行っている企業にはインテル、ネスレ、IBMなどがあり、ミネラルウォーター「エビアン」を展開するダノン、化粧品のロレアル、医薬品のジョンソン&ジョンソンなどの企業も関係が深いとされる。また、スターバックス・コーヒーのハワード・シュルツ会長はシオニストと指摘され、マクドナルドはイスラエルへの資金援助を続ける。海外ではこうした企業に対して、BDSの取り組みが行われている。

今回の出店中止について、良品計画企画室の武内健治氏は「4月の発表後にマーケット調査を進める中で、出店が経済的に合わないことが分かった。今回の決定は様々な要素を複合的に考慮したもので、STOP無印キャンペーンが直接影響したわけではない」と話す。いずれにせよ、良品計画がイスラエルへの投資を「不採算」と判断したことだけは間違いない。(オルタナ編集部=斉藤円華)2010年12月9日

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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