■書評:『コンプライアンスリスクに対するリテラシーの高い組織をつくる』(第一法規、大久保和孝著)■

本書は、大手監査法人に勤務経験のある著者の「激動の時代を生き抜くための唯一の不祥事予防法」だ。コンプライアンスの語源は、「柔軟性」「調和」「満たす・充足する」である。それゆえ、「法令遵守」ではなく「社会からの要請に応じながら、組織目的を実現」することを意味する。(オルタナ総研フェロー=室井 孝之)

内部統制が法制化された契機は、国内外の大型不正会計だ。

「Internal Control」は「内部統制」と訳されたため、経営者が現場を規則などで縛りつける対応をしているケースがあるが、著者は、「本来は経営者自身の規律を高めるための内部管理の仕組みと捉えるべき」だと説く。

コンプライアンスリスクに対するリテラシーの高い組織をつくる要諦は「経営トップがコンプライアンス経営に取り組むと明確に示す」ことである。

そのためには「自社は大丈夫だという根拠のない思い込み」「研修を繰り返しているし、コンプライアンスにはしっかり取り組んでいるという思い込み」「研修・教育をすれば現場は理解するはずという思い込み」の傾向がないかを確認せよ、と筆者は諫めている。

またコンプライアンスリスクに対するリテラシーを向上させる「5つの力」を身に付けることの重要性を強調する。

1)環境変化を認識し自分事と捉え、考え、行動できる力
2)相手が理解し、腹落ちする伝わる力(伝える力ではない)
3)部下のモチベーションを向上させるリーダーシップ力
4)対話を通して落し所を模索するファシリテーション力
5)何故その様な問題が起きるのか3回深堀して自問自答する質問力

本書は、経営幹部やコンプライアンス部門のみならず、全ての現場の管理職がコンプライアンスを実践する考え方、具体的行動が示されている。企業に限らず政治家、官僚、行政、大学、医療現場、教育現場などあらゆる組織で共通する不祥事予防の実務書である。