予想していたことが起きた。五輪のボランティア向け弁当が大量に廃棄されていたのだ。7月24日に放映されたTBS「報道特集」は「異常な数の弁当が廃棄されている」と報じた。理由は、無観客が決定したためボランティアが激減したことだという。だが、無観客の決定は7月8日で、開会式の2週間以上前だった。数を減らす余裕は十分あったはずだ。(オルタナ客員論説委員=井出 留美)

大量廃棄の理由は、無観客が決定したためボランティアが激減し、弁当類が宙に浮いたためだという。だが、無観客の決定は7月8日で、開会式の2週間以上前だった。数を減らす余裕は十分あったはずだ。

5月に筆者が大会組織委員会に取材した際、「人数のズレが生じた場合、食材をどのように調整して無駄を出さないのか」と質問した。それに対し、組織委員会は「キャンセルできるものはキャンセルし、転用できるものは転用して無駄を出さないようにする」と回答していた。

25日、組織委員会に尋ねると「廃棄は確認中」だという。26日、ボランティア向け飲食を委託している企業と、その飲食物を運搬する企業の両方に、事前に数の調整はあったかどうかを尋ねた。だが、二社とも「答えられない」。

27日、JOC(日本オリンピック委員会)関係者の情報を入手した。弁当の発注数は、ボランティアが減っていない当初の数から変えていなかった。JOC側の弁護士が「契約数通りに作るよう」指示したそうだ。そもそも一定数は廃棄するつもりだったとの考えだったとのこと。廃棄は発注の前提であり、織り込み済みだった。

ここで思い起こすのが大手コンビニの一部が廃棄前提の経営をしていることだ。2020年9月に発表された公正取引委員会の調査結果によれば、コンビニ1店舗あたり年間468万円相当の食料を捨てている。背景には「コンビニ会計」という独自の会計システムがある。

ただし、これは大手コンビニ本部の一部に言えることで、すべてのコンビニがそうなのではない。また、売れ残りコストは20%程度を本部が持ち、残りの80%以上を負担する加盟店は、廃棄により収入が少なくなるのは当然のことだ。筆者の取材では、年商2億円あるのに収益ゼロという加盟店もあった。

このように、捨てる前提で、過剰な量の食料を廃棄する社会構造は、どう考えても「持続可能」ではない。五輪の「捨てる前提」も問題だが、非日常のイベントだけでなく、日常的に捨てる前提の経営がまかり通っており、その企業が「SDGs」などと謳っていることこそ「SDGsウォッシュ」だ。

今回の五輪では食品ロス削減や持続可能な食品の調達を目標としていた。また、2012年のロンドン五輪では食品廃棄の量が明らかになっていないという反省を踏まえ、食品ロスの計量を行うことが今大会の必達目標だった。。それなのに、「廃棄数はわからない」では話にならない。食品廃棄のデータを公開してほしい。

今回、ボランティアが激減し、そのことが開会の2週間以上前にわかっていた、にもかかわらず、発注数を調整しなかったのは、発注した組織委員会も、受注した食品企業も、面倒だったからだろう。

食品メーカーからみれば、決められた数が減らされれば、その分だけ収入も減ってしまう。組織委員会への取材でも、食品企業の取材でも回答はもらえなかったが、そもそもどのような契約になっていたのかも明らかにすべきだ。

たとえキャンセルになったとしても、発注数を変えずに受注企業の利益を減らすことなく、余った食品は必要な組織へつなぐという導線を作っていればよかったのではないだろうか。

ここまで無節操に食品廃棄が行われるとなれば、フランスのように、捨てたことに対してペナルティ(罰金など)を課す、あるいはイタリアのように、食品ロスを減らしたことでインセンティブ(税制優遇など)を与える、といった経済社会政策が必要ではないだろうか。