ユニリーバ「持続可能ブランドは69%速く成長」

ユニリーバ日本法人 サンジェイ・サチュデヴァ社長インタビュー■

サステナビリティ経営で知られるユニリーバは、「売上高を 2 倍、環境負荷を半分にする」という「サステナブル・リビング・プラン」の期間を終え、アラン・ジョープ現CEO の下で2021年1月に新たな「ユニリーバ・コンパス」を打ち出した。成長と持続可能性の両立を目指す日本法人のサンジェイ・サチュデヴァ社長に聞いた。(オルタナ編集長= 森 摂、副編集長=吉田広子)

サンジェイ・サチュデヴァ・ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング社長
サンジェイ・サチュデヴァ・ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング社長

◆サンジェイ・サチュデヴァ(ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング社長)
1989 年、インド経営大院修了、ヒンドゥスタン・リーバ(現ヒンドゥスタン・ユニリーバ)入社。2016 年、ユニリーバ・ガルフ クラスターカテゴリーバイスプレジデント。2020 年 1 月から現職。

「パーパス」(存在意義)を明文化したブランドは、成長が速い

――ポールマン前 CEO はサステナビリティ経営で有名な存在でした。CEO 交代の後も経営理念は引き継がれていますか。

はい、アランは確実にポールマンの戦略を受け継いでいます。ポールマンは、サステナビリティにおいてより包括的なアプローチをユニリーバに取り入れました。しかし、もともとユニリーバの歴史には、サステナブルな DNA が埋め込まれていると思います。

創業者のウィリアム・ヘスケス・リーバは 1880 年代、英国に衛生的な習慣を広めるため、「サンライト」石けんを発売しました。創業当時から、人々の健康を守ることが当社のミッションなのです。

それは現在のパーパスである「サステナビリティを暮らしの『あたりまえ』に」にも受け継がれています。いまでも多くのブランドを通じて、人々の衛生や健康に働きかけています。例えば、「ダヴ」でも、他社よりも先に人々の自己肯定感に着目し、サステナビリティをうたってきました。ユニリーバにとってサステナビリティは常にドライバーでした。

――ポールマン前CEOが2010年に掲げた「サステナブル・リビング・プラン」は「売上高を2倍、環境負荷を半分にする」という分かりやすいコミットメントでした。

この 10 年でかなり前進しました。「すこやかな暮らし」の分野では世界で13億人以上の衛生や健康に働きかけました。「環境負荷の削減」では、世界で製造工程からの温室効果ガス排出は75%、水の消費量は49%、製造で発生する廃棄物は 96%削減できました。「経済発展」の分野でも、世界の女性管理職比率が51%となりました。

――この 10 年で、売り上げは 2 倍になったのでしょうか。

もともと期間をはっきり定めていたわけではなく、またコロナ禍で市況が大きく影響を受けていますが、毎年3~5%成長するという目標を達成し、全体として30%ほどの成長を実現しました。売上高は確実に伸びていますし、同時にサステナビリティの目標でも成果を上げています。

若い世代は「社会課題を解決するブランドなのか」を問う

――ユニリーバの約 400 ブランドのうち「28 のサステナブルなブランドは成長スピードが速い」という話を聞きました。

「ユニリーバ・コンパス」は3つの信念に基づいています。「パーパスを持つブランド(※)は成長する」「パーパスを持つ人々は成功する」「パーパスを持つ企業は存続する」です。

※ユニリーバの定義によると、「パーパスを持つブランド」とは、ブランドとしてのパーパス(目的・存在意義)を明文化し、環境や社会に配慮した製品やプログラムを展開しているブランドを指すという

ユニリーバが展開するブランドはすべてサステナビリティを追求していますが、なかでもパーパスを持つブランドは、成長が 69%速いというデータがあります。当社のなかでも、「ダヴ」や、海外で展開している石けんブランド「ライフボーイ」など、明確なパーパスを持ち、早くからサステナビリティを戦略の中心に置いてきたブランドは特に良い業績をあげています。

世界はこれまで以上に変わってきています。サステナビリティはブランド選択の中心になりつつあります。

特に、ミレニアル世代や Z 世代など若い世代は環境、不平等といった情報に触れる機会が多く、だからこそ社会にとって重要な課題を本当に解決するブランドを選び、そうではないブランドを避ける傾向にあります。ですから、ブランドがサステナブルであることがますます重要なのです。

また、採用においてもミレニアル世代以降は、サステナビリティに取り組んでいる企業を好んでいます。パーパスに共感し、実現しようとする優秀な人材が集まるのです。それが、良い組織や優れたイノベーションにつながります。

私たちはパーパスを持つ、サステナブルな企業こそが存続できると信じ、また実際に目の当たりにしてきました。サステナビリティの取り組みをすることで、他社より成長するだけではなく、コスト削減にもつながります。

つまり、ビジネスのボトムラインが改善するのです。ユニリーバは全世界の工場で、2008年以来、10 億ユーロ(約1200億円)のコスト削減に成功しました。

さらに、リスク低減にもなります。ユニリーバ・ジャパンでは、 2015 年に国内で使用するエネルギーを100%再生可能エネルギーに切り替えました。2019 年には、シャンプーなどのプラスチックパッケージに再生プラスチックを導入しました。そのために少し調達コストが増えましたが、将来の調達リスクを考えると、いま投資しておいた方が良いと判断しました。

「サステナブル・リビング・プラン」から「コンパス」へ

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yoshida

吉田 広子(オルタナ副編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。執筆記事一覧

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キーワード: #サステナビリティ

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