
グラミン銀行のムハマド・ユヌス氏など世界70カ国で多くのソーシャル・アントレプレナー(社会企業家)を支援してきた非営利団体の「アショカ」が日本に進出した。2011年1月に日本法人を設立、17日に都内で会見を行った。
創立者で「社会企業家の父」と呼ばれるビル・ドレイトン本部代表も来日し、「日本の人々がこのプログラムを通じてさらによい社会を作り、世界の変化の動きに加わってほしい」と期待を述べた。
ドレイトン氏は社会企業家という概念を世界で初めて打ち出し、1981年にアショカ(本部・米バージニア州)を立ち上げた。
アショカの定義によれば、社会企業家とは「機能しなくなった古い社会システムを変革する独創的なアイデアを実践し、持続性を持ちながら、社会問題の解決を実現する人」であり、その組織は、社会企業家と支援者の「世界規模のコミュニティー」だという。そして「誰もがチェンジメーカーになれる」(Everyone A Changemaker)というビジョンを掲げる。
現在は世界70カ国で2700人のフェローと呼ばれる社会企業家を支援し、市民セクターから社会の変革を進める。その事業は、教育、就業支援、貧困者の支援ビジネスなど多岐にわたる。
フェローはこれまでの統計では、人口1000万人程度の中から1人登場するかどうかというほど、厳しい審査によって選ばれる。
17日の記者会見で、ドレイトン氏は「日本の人と話すと不思議なことに誰もが自国への自信を失っている。これだけ素晴らしい国を作れた人々の中から必ずチェンジメーカーが生まれ、世界のフェローとつながりながら社会を変えるはずだ」と話した。
さらに「日本が岐路に立っているようだ。15年後の日本は、ものづくりの拠点だったのにさびれたアメリカのデトロイトのようになるのだろうか。それとも社会企業家が集って活気にあふれたシリコンバレーのようになるのだろうか」と投げかけた。
日本法人のアショカ・ジャパンは他国と同様に、4つの事業を主に行う。社会企業家の発掘とその支援を行う「フェロー・プログラム」、社会変革を目指す若者向けの自習プログラム「ユースベンチャー・プログラム」、オンラインでの政策コンペとその実現の支援「チェンジメーカーズ」、さらに企業とNPO、市場の連携と啓発活動だ。
日本の代表にはかつてはブリヂストン米国法人の経営幹部で、自らも社会支援ビジネスを行ってきた槇加志波(かしわ)氏が就任した。「社会企業家の発掘など、長い時間がかかる。社会を変えられると信じて一歩一歩事業を進めたい」と抱負を語った。
アショカ日本法人の立ち上げではみずほ銀行が資金などの支援をするが、今後はさまざまな企業やNPOと協力関係を深めたいという。(オルタナ編集部=石井孝明) 1月17日