山口県上関町で中国電力が進める上関原子力発電所の建設工事の一時中止を訴えて、10代が中心の若者5人が1月21日から31日までの11日間、山口県庁前でハンガーストライキを行った。寒さと空腹に耐えた240時間を振り返り、参加した若者の一人は「行動を起こしたことで変化が生まれた」と語った。
■賛否の中、応援の手紙200通
ハンストに参加した東京出身の岡本直也さん(20)は、11日間を水と塩だけで過ごし、体重が約10キログラム減った。ハンストに踏み切った動機について岡本さんは「上関原発が作られようとしている。その実態を知らせたいと思った」と話す。
岡本さんは大学を中退したのち、上関原発予定地の対岸にある祝島で農業を手伝いながら、島での原発反対運動に参加する。予定地付近は生物多様性のホットスポットとしても注目されているが、陸上では既に発破作業が行われ、海上では作業台船の進出をめぐって連日のように中国電力と建設反対派の漁民が攻防を繰り返している。
ハンストの公式ブログで岡本さんは「原発で瀬戸内海の海が汚されるのは嫌。僕たち若い世代には豊かな海や自然を残してほしい」と思いをつづる。ハンストの情報はネット記事やツイッターなどで拡散。趣旨への共感や応援など肯定的な反応がほとんどだが、「ハンストは卑劣。もっといい方法はなかったのか」など、否定的な声も目立った。
岡本さんはこれらの反応について「賛否両方の意見があると思う。けれども、ハンストの結果としてこれだけの反響が生まれ、原発にも関心を持ってもらえたと思う」と振り返る。
山口県庁には、ハンストへの応援の手紙が約200通届いた。
■「地域に生まれた溝を埋めたい」
ハンストは当初、山口県庁舎のロビーで始まったが、県職員の退去の求めに応じて県庁前広場に移動。県は口頭で退去を求め続けたが、強制排除はしなかった。「最初は無視する職員がほとんどだったが、日がたつにつれて声をかける人も現れた。立場は違うがお互いの間にコミュニケーションが生まれた」と岡本さんは話す。
今回のハンストに対して、山口県と中国電力は「特にコメントはない」としている。岡本さんは今後、原発をめぐって地域が推進と反対に分断された上関町で、その溝を埋めたいと考えている。「双方が話し合える場を作りたい」というのが岡本さんの願いだ。(オルタナ編集部=斉藤円華)2011年2月3日