オルタナは月1回、サステナビリティのホットトピックをゲストと話し合うSBL(サステナブル・ビジネス・リーグ)セミナーを開いている。19回目となる3月25日は、国際環境NGO350.org日本支部代表の横山隆美(たかよし)さんを招き、外資系金融機関からNGOに転じた異色の経歴と、現在の活動について伺った。(オルタナ副編集長・長濱慎)

横山さんは1976(昭和51)年、東京大学経済学部を卒業しAIUに入社した。当時、東大卒で外資系企業に入るのは珍しく、歓迎されたという。これを皮切りに金融マンとしてのキャリアをスタートさせ、最終的にはAIU傘下のアメリカンホームや富士火災海上保険の代表を務めた。
2017年の退任まで「恵まれたサラリーマン生活だった」と振り返る横山さんだが、米国人の同僚に言われた「ある一言」がターニングポイントになった。横山さんをNGO活動に向かわせた、その一言とは何だったのかを語った。
横山さんはボランティアとして350.orgで活動を始め、2019年に代表になった。利潤の追求を目的としないNGOは企業とは明らかに異なる世界だが「より良い社会のために」という理念は、近年のパーパス経営に通じるものがあるという。
350.orgは100%自然エネルギー社会の実現を目指し、草の根の運動を展開。横山さんが力を入れているのが、3大メガバンクに海外石炭プロジェクトへの融資をやめさせることだ。昨年はMUFGの株主提案に参加し、脱炭素化に向けた投融資方針の厳格化を訴えた。
当初はメガバンクとの対話に苦労したというが、現在は先方から相談を受ける関係を築けるまでになった。企業とNGOは敵対するのではなく、地道にコミュニケーションを重ねることが大切だと横山さんは指摘する。
日本社会で次第に存在感を示しつつあるNGOだが、財政不足や人手不足などまだ課題は多い。学生がNGOで環境インターンを行えば就職にプラスになる仕組みづくりにも取り組んでいきたいと、横山さんは将来に目を向けた。