ネスレ日本は5月24日、「沖縄コーヒープロジェクト」の進捗状況について発表した。沖縄を新たなコーヒー産地とし「年間で平均1人400杯飲む」日本の需要に応えるとともに、県内の耕作放棄地活用や雇用創出などの社会課題解決にもつなげる。(オルタナ副編集長・長濱慎)
ネスレは世界最大のコーヒー豆購入企業として、グローバルで持続可能な調達に向けた生産者のサポートを行なっている。「沖縄コーヒープロジェクト」は、栽培に適した北限ギリギリにある沖縄の地域振興を図る取り組みとして、2019年に始まった。
プロジェクトの狙いの一つが、耕作放棄地の活用だ。沖縄では1985年から2015年の間にサトウキビなどの耕作放棄地が3倍に増え、害虫の発生や廃棄物の不法投棄を引き起こしている。こうした土地をコーヒー栽培に活用することで、コロナ禍で打撃を受けた観光業とは別の産業を確立し、沖縄産のコーヒーを新たな特産品とすることを目指す。
2022年5月現在、名護市など県内11カ所で累計約6500本のコーヒー苗木を植え、22年冬から23年春にかけて最初の収穫を予定している。琉球大学とは沖縄に適したコーヒー栽培の研究で、県立北部農林高校とは将来の栽培を担う人材の育成で、それぞれ連携を進める。
進捗状況の発表会では、プロジェクトで連携する4人が意気込みを語った。
深谷龍彦・ネスレ日本代表取締役社長兼CEO
「プロジェクトは簡単ではないが、ネスレ日本として中長期的に取り組んで必ず成功させたい。ハワイに行くとコナコーヒーを買ってくるように、沖縄旅行のお土産がコーヒーになる日が来るのを夢見ている」
高原直泰・沖縄SV代表取締役(元サッカー日本代表)
「テスト収穫したコーヒーを試飲したが、酸味とコクのバランスが良い。まずは5000杯分ぐらい飲める収穫量を目指したい」
高岡二郎・ネスレ日本飲料事業本部部長
「いつ広く飲めるようになるか。10年単位のプロジェクトなので現時点では言えないが、できるだけ早くたくさんの人に提供できるようにしたい」
中村正人・うるま市長
「積極的に予算を投じ、場所を提供し、人を派遣し、行政としてプロジェクトを全面的にサポートし、共に取り組んでいきたい」
うるま市は名護市に続いてネスレ日本と連携し、耕作放棄地を活用した農場の開設(22年7月)や、福祉事業者のスタッフが働くユニバーサルカフェ(23年3月)などの展開を予定している。ネスレ日本は将来的に、沖縄産コーヒーを「ネスカフェ」ブランドで製品化することも視野に入れる。