東日本大震災で企業からの支援スタート

東日本の太平洋岸を中心に甚大な被害をもたらした東日本大震災で今後、企業やNPOの支援活動がクローズアップされるのは必至だ。青森から茨城までの太平洋岸、距離にして700キロを超える広範に及ぶ被災地域を救援や復興するためには、国と地方自治体の力だけでは到底足りない。民間企業による活発な支援活動が求められている。

パナソニックは12日、被災者や地域社会を支援するために義援金3億円の支出を決め、同時に支援物資としてラジオ1万台、懐中電灯1万個、乾電池50万個を被災地に提供することを発表した。地震で発電所が被害を受けて節電が求められていることから、同社関連事業所で野外広告灯も消灯する。

トヨタ自動車も同様に、義援金3億円の拠出と物的支援を行う方針を決めている。国内を代表する大手企業が義援金の支出を決めたことから、今後も各社から義援金が集まる可能性が高い。一般からの義援金の受付も始まり、ヤフー、ミクシィ、グループンジャパンといったインターネット関連企業がウェブサイトや携帯電話を通じて行っている。

被災地の人々が最初に必要とするのは食料と水。このため、食品や飲料メーカーからの物的支援も続々と発表されている。

ファミリーマートは10万食分の菓子、ゼリー飲料、カップラーメン、5万本の飲料水を提供。日清食品は初回の救援物資として「どん兵衛きつねそば」8万400食分、「どん兵衛てんぷらそば」3万6000食分、「チキンラーメンどんぶり」1万8000食分を被災地に送ることを決めた。

このほか、味の素の「味の素KKおかゆ」5千食、「クノール カップスープ」10万食分の供出、キリンビバレッジのミネラルウォーターやお茶15万本の提供など、続々と支援の手が差し伸べられている。

阪神淡路大震災の経験を元に、大地震の発生時に災害支援に取り組む企業は多い。衣食住すべてが不足する被災地域の住民に自社商品を送り届けたり、得意分野の技術を活用して復興支援につなげる形だ。

サントリーフーズでは災害時に自動販売機の飲料を無償提供できる「緊急時飲料提供ベンダー」を開発し、2009年末で3600台を行政施設や病院などに設置中。被災民が飲料水を簡単に飲料を取り出すことが出来る。

ユニクロは2004年10月に発生した新潟県中越沖地震の際、防寒用としてアウトラストフリース、肌着、アウターなど4万4000点、1億円相当の自社製品を寄贈した。同社では継続的な緊急支援活動を行うことを表明していることから、今回も物資提供が予想される。

技術力を生かして被災地支援を行うのが測量メーカーのパスコだ。航空写真、地図データ、その空間情報処理技術を生かしてウェブサイト上で災害緊急情報を提供。今回も原発災害に関する政府避難指示区域の衛星写真上での表示や、地図上での詳細な震度分布図を公開している。

こうした義援金の拠出や救援物資の提供は、今後も日増しに増えることが予想される。阪神・淡路大震災では、現場の混乱からせっかくの支援物資が一部で無駄になる事態も起きた。今回はその教訓を活かして、被災民と支援側のパイプ役となる自治体が迅速、的確に情報提供を行うことが必要だ。

未曾有の大津波に襲われた被災地の復興にはこれから長い道のりが予想される。阪神・淡路大震災の復興に要したといわれる費用はおよそ16兆円。政府は今回の地震関連予算として補正予算の編成もしくは2011年予算の早期成立を目指しているが、混迷した政局でどう道筋がつくのかは未知数。2010年度の予備費の使い残しも2038億円と少ない。いままで以上に民間支援が必要とされるのは間違いない。

いまこそ、企業による大掛かりな被災地支援が求められている。各社が取り組むCSRが本物かどうか試されるときだ。(形山 昌由)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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