米国の例にも学びたい被災地支援

被災者を支援し地域の早期復興につなげるためには、日本の総力を挙げた対策が必要だ。ボランティアなど民間にできることは何か。米国のNPO活動に詳しい柏木宏教授(大阪市立大学大学院創造都市研究科)に聞いた。

1994年のロサンゼルス震災時には、震災発生後、数時間で赤十字・救世軍が現地入りし、迅速な支援活動が行われました。今回のような大規模な災害時に、より具体的で幅広い支援を行うには次の3つの要素が必要です。

1つ目は、各団体が災害時に日常の活動のノウハウを応用する、という意識を持つことです。米国のNPOは台風などの自然災害や個人宅の火災・交通事故など日常的な災害にも出動しており、日頃からの訓練・体制が整っています。

これにより、災害時にもより専門的、具体的な支援を行うことができます。日本でも通常時での社会問題、たとえばホームレスへの食事提供や、メンタルヘルスケアを行う団体は既にあります。これからメンタルヘルスケアのニーズは増加します。

普段の活動を通じて得たノウハウを災害時に応用するという意識を持ち、体制を整えておくことが大切です。

2つ目は、災害時に各団体の活動のキャパシティを広げるため、財政的な支援を行う仕組みを整えることです。米国では、資金提供を行う財団が各NPOの防災活動などの日常活動への支援を行っているため各NPOの特性を把握しています。

そのため、災害時にどのNPOにどれだけの資金提供を行うかの判断がつき、適正な財政支援を行うことができます。

3つ目は、分野横断的な支援を行うこと。NPOは医療・福祉・環境などの分野がありまが、災害時にはこれらの分野間で連携し支援を行うことが必要です。

これから時間が経つにつれ、さまざまなニーズがでてきます。NPOは普段の活動を通じて得たノウハウを災害時に応用するという意識を持って体制を整えておくこと、各分野のNPOが連携して支援を行うこと、そして災害時にキャパシィを広げるための資金提供の仕組みを整えることが、より迅速で具体的・専門的な支援を行うことにつながります。(聞き書き=オルタナ編集部 猪鹿倉陽子)

柏木宏氏略歴)同志社大学卒業後、渡米。ラトガース大学大学院労働研究科をへて、アメリカの移民、法律、福祉などのNPOで働く。1985年にカリフォルニアで日本太平洋資料ネットワーク(JPRN)を設立、以降アメリカの人権やNPOに関する調査に従事。また、日本からNPOの経営者、研究者、企業や行政の関係者を受け入れ、福祉、まちづくりなどのNPOの個別分野、マネジメントの研修を行う。こうして経験を基礎に、共生社会を目指すツールとしてのNPOの理論と運営に精通したNPO界のリーダーを育成するため、実践的な授業を実施する。 (オルタナ編集部 猪鹿倉陽子)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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