トヨタ財団は7月27日、トヨタ自動車の問題解決手法をNPO向けに伝える連続講座「第6期トヨタNPOカレッジ『カイケツ』」の成果発表会を行った。同講座は、社会課題解決の担い手である非営利組織のマネジメントを改善し、より大きな成果を出してもらうことが目的だ。6団体が約7カ月間かけて取り組んできた問題解決のプロセスをA3用紙1枚にまとめ、その成果を報告した。(オルタナ副編集長=吉田広子)

「第6期トヨタNPOカレッジ『カイケツ』」の成果報告会で
「第6期トヨタNPOカレッジ『カイケツ』」の成果報告会で

トヨタ財団は、助成金を拠出するだけでなく、NPOに問題解決力を身に付けてもらうことを目的に、2016年から「トヨタNPOカレッジ『カイケツ』」を開催。NPOが抱える組織上の問題点を改善し、社会課題の解決を後押しする。

トヨタの問題解決は、「テーマ選定」「現状把握」「目標設定」「要因解析」「対策立案」「対策実行」「効果の確認」「標準化と管理の定着」の8ステップからなり、参加団体は約7カ月間かけて問題解決のプロセスをA3用紙1枚にまとめていく。

トヨタ財団の山本晃宏常務理事は「これまで、約90団体にカイケツを受講してもらった。今回取り組んだ問題が解決しても、これからも日常業務の課題が出てくるはず。問題解決の手法をこれからの業務に生かしてほしい」と期待を込めた。

成果発表会では、6団体が問題解決の成果を報告した。

業務過多の理事長の残業がゼロに

NPO法人あきた結いネット(秋田市)は、住居提供や就労支援などホームレス支援を行っている。カイケツでは、「理事長の業務時間を削減する」をテーマに掲げ、業務過多が常態化していた理事長が理事長にしかできないタスクや、新事業の準備といった業務に集中できる環境づくりを目指した。

現状把握するなかで、「職員対応」に多くの時間を費やしていることが判明。そこで、業務改善システム「キントーン」を導入し、情報共有の徹底や各職員のタスクを明確化していった。その結果、理事長の超過勤務時間(残業・休日出勤)が6~7月はゼロになった。菅原啓汰さんは「理事長だけではなく、法人全体の効率化や負担軽減にもつながり、タスク循環が円滑化した」と語った。

認知症高齢者のケア・プログラムを改善へ

都城三股農福連携協議会(宮崎県都城市)は、テーマに「『認知機能改善ケア・プログラム』参加者の満足度向上」を掲げ、問題解決を進めてきた。同団体は、認知症高齢者を対象にしたプログラムを行っているが、屋内作業の場合、当事者の満足度が著しく低下することがあったという。

そこで、なぜ満足度が低くなるのか要因を解析し、秋期に向けてプログラムの改善を行っている。岡元一徳さんは、「満足度が低いことに関して、これまで他責になっていたことに気付いた。データをしっかり取り、振り返ることの重要性を認識した」と振り返った。

助成金に頼らない収益源を確立したい

特定非営利活動法人ゆどうふ(東京都町田市)は、ひきこもりなど生きづらさを抱えた若者やその家族を支援する活動を行っている。収益源の多くを助成金が占めることから、「外部財源に依存しない収益源の確立」を目指し、自主事業として、相手に配慮しつつ自分の思いをしっかり伝えていくコミュニケーション「アサーション」を学ぶ講座を本格展開することになった。

そこで、カイケツでは、アサーション講座を年33回できる体制の構築を目標として設定した。職員の業務量の多さや目的意識の共有不足といった課題が浮き彫りになり、現在はタスクの優先順位や、効率的に事業を進める体制づくりに取り組んでいる。辻岡秀夫さんは、「アサーション事業を成功させるために、継続して問題解決に取り組んでいきたい」と話した。

3団体を担当した中野昭男講師(のぞみ経営研究所代表)は、「みなさんの成長を感じた。問題が起きれば、すぐ『対策』をしたくなるが、ステップが重要。『現状把握』をしたうえで、『要因解析』し、その原因を取り除く『対策』をすることが重要だ。それが、的を射た対策につながる。これから問題が発生しても、組織としてみんなで取り組んでいく風土ができたようで良かった」と話した。

種子島で「やりたい」を表現できる文化づくり

一般社団法人LOCAL-HOOD(鹿児島県中種子町)の代表理事・湯目由華さんは、地域おこし協力隊として、種子島に移住。「種子島ではチャレンジしにくい」という声を聞いたことがきっかけとなり、種子島のまちづくりについて語り合うイベント「たねがしまスープ」を運営している。

イベント自体は成功しているものの、運営スタッフの満足度がばらばらで、達成感を得られる仕組みづくりを行いたいという思いで、カイケツに参加。現状把握として、初めてスタッフのアンケートを取ったところ、満足度は10点満点中6.2点で、「スタッフ同士を知る機会がない」「質問しにくい」とった声が上がった。業務をセクションに分けたり、隔週で打ち合わせの機会を設けたりするようになったことで、湯目さんは「相談しやすい雰囲気になり、アイデアがたくさん生まれるようになってきた」と手応えを語った。

担当した鈴木直人講師(元日野自動車TQM推進室室長)は、「やりがいの向上という難しいテーマだったと思う。人の心情を数字で表すのは難しいが、数値で表すからこそ、成果が見えてくる。『わいわいがやがや』とチームワークで解決に導いていったのが良かった」と評価した。

日本で暮らす外国人と日本人ボランティアをつなぐ

特定非営利活動法人アジア人文文化交流促進協会(JII、東京・目黒)の理事・事務局長のヤン・ミャオさんは、中国・北京出身で、20年ほど前から日本で暮らしている。JIIは、2019年に「おとなりさん・ファミリーフレンド・プログラム」(OFP)を立ち上げ、地域に住むおとなりさん(日本人ボランティア)とペアを組み、日本での生活になじみやすくするための支援を行う。

だが、マッチングするまでの期間が30日~78日とばらつきが多く、コーディネーターの運営管理業務も煩雑だった。そこで、カイケツでは、「参加者規模の増加に対応するためのOFP運営効率の改善」をテーマに掲げた。重複タスクを減らしたり、データベースシステムを導入したりすることで、マッチング期間を短縮し、参加者数を増やすことに成功した。

ヤンさんは「日本で暮らす外国人の多くは『情報不足』と『孤立』の問題を抱えている。カイケツに参加して現状を認識できたことが良かった。団体への期待が高まるなかで、前もって規模拡大の対応の準備ができたことにとても感謝している」と語った。

市民団体と顔の見える関係を築く

認定特定非営利活動法人愛知ネット(愛知県安城市)は、災害時に活動する市民団体と顔の見える関係を築くことを目的に、指定管理者として愛知県内で4つの市民活動センターの運営を行っている。

協働の推進の結果としてマッチング件数が増えることが望ましいので、カイケツでは、「相談者の満足度&マッチング件数をアップしよう」をテーマにした。マッチング件数を増やすために、相談フォロー率100%を目指し、相談記録のフォーマット改正やマニュアル作成に取り組んでいる。

増田貴子さんは、「相談相手が自らパートナー探しを求めてくることは少ないが、子ども食堂の実施など、パートナーが必要になってくる場合もある。そうした判断は、丁寧なヒアリングや相談後のフォローによって分かることが多いということを認識できた。スタッフとも現状を共有できたことが良かった」と振り返った。

担当した古谷健夫講師(クオリティ・クリエイション代表取締役)は、「最終的に『システムを導入する』という対策になるかもしれないが、まずは現状を『見える化』し、何が問題かをとらえておくことが必要だ。愛知ネットは、顧客満足度に取り組んできたが、顧客の満足度が上がれば、職員の満足度も上がるはず」と話す。

「皆さんには、カイケツを問題解決の『型』を学んでもらったが、今後は応用しながら、本質的に取り組まなければならない課題に取り組んでいってほしい。実際には続けていくことは難しく、しばらくすると元に戻ってしまうこともある。『PDCA』から『SDCA』へ、つまり標準化(Standardize)していくという流れが重要だ。社会課題に取り組んでいる素晴らしいNPOが、より効率的に業務をまわして、力を発揮し、日本全体が良くなるように盛り上げていってほしい」(古谷講師)